社会福祉法人悠久会では「SDGsと福祉とまちづくり」をテーマに持続可能な社会づくりを目指すべく事業を推進しています。「サステナブル」「SDGs」と持続可能な社会づくりの実現のためには関連する様々なキーワードがあります。例えば「サステナブルとSDGsの違い」を疑問に思うように、似た言葉があると混乱してしまうのではないでしょうか?SDGsに関わる言葉を整理させていただくことで皆様方によりSDGsが身近なものになることを期待して紹介させていただければと思います。
サステナブルとは?定義や意味を解説
サステナブル(Sustainable)とは「持続可能性」を意味しています。
持続可能性が注目される理由として近年、資本主義経済の発展により物質的に豊かになったものの、地球温暖化を原因とする自然災害の増加、格差の増大、大量生産大量消費に加え爆発的な人口増による資源の枯渇の懸念等の社会課題が顕在化したことです。資源消費型の生活スタイルを継続すると次世代以降の生活が立ちゆかなくなる危険性=「持続不能な状態」に陥る危険性が提唱されました。
サステナブルすなわち持続可能性を維持するには経済的豊かさのみを求めるのではなく、経済・社会・環境のバランスを考慮した発展が必要です。今までの解説記事(「SDGsを事業戦略に取り入れた悠久会のビジョン」)で語ってきたように、我々の生活に影響を及ぼしかねない社会課題の解決は他人事ではなく、企業や個人それぞれが取り組む必要性があります。多数の生活者を支える当法人においても地域福祉の推進を実現するには社会課題は避けて通れません。
暮らしを営む要素として「衣・食・住」という言葉があります。本記事ではサステナブルに焦点をあてつつ当法人が提供する生活支援の構成要素であり「衣・食・住」の観点から悠久会のサステナブルに対する考えを説明していきたいと思います。
悠久会におけるサステナブルの取り組み例
概念的な言葉でサステナブルを語るよりも実際の取り組みを紹介した方が理解が進むと思いますので、悠久会でのサステナブルな取り組み事例を紹介させていただきます。
1.再生可能エネルギーの活用
悠久会では、銀の星学園にて太陽光パネルの設置と蓄電池の導入を行っており、自然エネルギーを有効活用することにより有限である化石燃料の使用量を削減するように努めています。この取り組みはSDGs目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」に貢献しています。
※銀の星学園は福祉サービスの制度において「障がい者支援施設」と位置づけられており、障がいを持った利用者の方が生活をされています。
2.環境負荷を減らしたパッケージ
地産地消のおむすびカフェ「島原むすびす」では、商品の包装をプラスチック容器から紙容器への置きかえ、FSC認証の紙容器の使用、地球環境に優しい植物由来の生分解性のストローの使用、再生可能な有機資源から得られるバイオマスプラスチックを50%以上含むレジ袋の使用等の環境に配慮したパッケージを使用する等のサステナブルな取り組みを実践しています。この取り組みはプラスチック廃棄物の使用量を削減すると同時に、海洋プラスチックゴミの削減による海洋生態系の保護にも貢献できる可能性があります。
3.フードロス対策
日々の食生活では、どうしても食べ残し(残食)等が発生してしまいます。銀の星学園では生ゴミ処理機を導入し、食べ残しから堆肥を製作することが可能です。生ゴミからできた堆肥が畑にまかれ、野菜等の食物を育てることが可能であり「生産-消費-再生産」と食に関する循環的なサイクル(サーキュラーエコノミー)を実践しています。このサステナブルの取り組みの結果、食料廃棄物の削減かつ廃棄物処理施設に送られる生ごみを減らすことができ、焼却エネルギーの減少(CO2の削減)につながり、SDGsの達成にも貢献します。
社会福祉法人悠久会がある島原市では「4万人のごみ減量プロジェクト」として、燃やせるごみ排出量の削減に取り組んでいます。具体的な取り組み目標として平成30年度の1日1人あたりの燃やせるごみ排出量1025gを850gへ削減することを目標として掲げており、生ごみの水切り、紙ごみの分別の徹底を呼びかけています。燃やせるごみの排出量850gを達成すると、処理費用が年間約9000万円の削減にもつながります。悠久会も上記活動を通じて島原市の目標達成に協力してまいります。
(参考:「4万人のごみ減量プロジェクト」島原市・PDF)
- 社会福祉法人悠久会がSDGsに取り組む理由については「SDGs宣言」をご覧ください。
サステナブルファッションとは
上記では主に衣食住の「食」と「住」を取り上げました。続いて「衣」の観点から近年、話題となっているサステナブルファッションについても触れてみたいと思います。ファッション産業の抱える社会課題としてサステナビリティの観点では海外からの生産や輸入に頼っている、サプライチェーンの複雑さによる環境負荷等の問題が指摘されています。
※参考:環境省「サステナブルファッション」
特にファストファッションの分野では商品トレンドの頻繁な変化、及び安価な価格帯での商品提供により消費サイクルの早さを生み出しており、大量生産・大量消費につながっています。このような消費に関する問題はSDGs目標12「つくる責任 つかう責任」に関連する取り組みが有効な解決策となります。
これらの「衣」の社会課題に対して当法人も何か取り組めないかと模索していました。「BYE BYE Plastic!プロジェクト」のプロジェクトの一つにオリジナルエコバックの作成があります。その結び紐として島原市内の保育園からサイズアウトして着れなくなった子ども服を募集しました。これらの服を加工することで色とりどりのオシャレな三つ編みリボンとしての再利用ができました。
これらは小さな取り組みの1つですが衣服を無駄にせずリサイクルできる一例です。このような取り組みを通じて、大量生産・大量消費を見直し、サステナブルファッションへの関心を高めていきましょう!
皆でサステナブルファッションを推進しよう!
(※上記画像は環境省より提供されているSNS投稿等に利用可能なシェア用画像です。環境省「サステナブルファッション」より)
SDGsとは?定義や意味を解説
SDGsとは、国連加盟国が2015年に採択した「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に基づく国際目標であり、17の目標と169のターゲットが定められています。SDGsは経済・社会・環境のバランスの取れた発展を目指し、「誰一人取り残さない(leave no one behind)」という理念に基づいています。
(参考:「2030アジェンダ」国際連合広報センター)
サステナブルとSDGsの違いとは?~共通点と相違点から紐解く持続可能な社会への道筋~
よく似たような言葉ですが、サステナブルとSDGsの違いとは何でしょうか?
ここではSDGsとサステナブルの共通点と相違点を比較することで、両者の特徴を明確にし、「持続可能な社会」を目指す私たちの取り組むべき方向性を示していきたいと思います。
サステナブルとSDGsは何が違う?
項目 | SDGsの特徴 | サステナブルの特徴 |
---|---|---|
期限 | 2030年をゴールとする明確な期限 | より広い概念で、長期的な理念(期限は定めていない) |
目的 | 17の目標と169のターゲットの達成を目指す。(持続可能な開発目標) | 経済・社会・環境の調和が取れた持続的に発展する社会を目指す。 |
評価指標 | 具体的な数値目標や進捗を測定することが可能(共通な指標) | 包括的かつ抽象的であり、具体的な指標は国や企業がそれぞれ定める。(個別的な指標) |
SDGsの特徴
SDGsは17の目標と169のターゲットが掲げられており、具体的な目標が定められています。その成立や合意に至る背景もMDGsの流れ及び京都議定書やパリ協定の流れを汲んでいることや、国連加盟国が2015年に合意した世界共通の目標なのです。SDGsは達成期限が2030年までと有期限であることが特徴です。
サステナブル(持続可能性)の特徴
サステナブルは概念をあらわす抽象的な要素であり、短期的な経済的利益のみならず経済・社会・環境の三側面の観点から中長期的な持続可能性を志向しています。すなわち持続可能な発展を目指す社会や個人のあり方を示していると言えます。
サステナブルとSDGsの共通点と関係性
サステナブルとSDGsの共通点は「持続可能性」に着目している点があげられます。
経済・社会・環境のバランスの取れた発展を目指すことや、SDGsの特徴である「普遍性」「包摂性」「参画型」「統合性」「透明性」の項目に関してはサステナビリティを推進する上でも違和感はありませんし、共通の指針となり得ると考えられます。
サステナブルとSDGsの関係性はざっくり言うと「理念」と「行動計画」に似た関係性でもあるかなと思います。サステナブル(持続可能性)という広く大きな理念のもと、SDGsは2030年までと期限を定め、具体的な達成目標等を示しています。
SDGsに取り組む意義
現代社会は地球規模で環境問題、社会問題等の様々な課題を抱えており、この課題を放置すれば私たちの子どもや孫世代以降に大きな負債を残すことになります。SDGsに取り組む意義は義務感や負の側面を解決することだけなのでしょうか?
SDGsで掲げられている目標の達成はプラスの側面もあるのです。そもそもSDGsは社会課題を起点としていますので、その解決に取り組むことはビジネスチャンスにもつながります。なぜならば、世のビジネスの大半は他者の困りごとを解決することによりお金を頂いているからです。ゆえに社会課題の解決に取り組むことはビジネスチャンスにつながる可能性があるのです。
ESG投資とサステナビリティ
企業の資金調達への影響として、ESG投資が示すようにSDGsに取り組まない企業は投資対象から外される傾向があり、サステナブル投資への期待の高まりからも、その重要性を増しています。日本版スチュワードシップ・コードに賛同する機関投資家等はESG課題について投資先企業に働きかけを行い、社会の持続可能性(サステナビリティ)を高めるよう取り組んでいます。
※参考:GPIF「ESG投資」
例えば三井住友トラストアセットマネジメントでは「トップダウンエンゲージメントESG12テーマ」を掲げており投資先企業に対し建設的なエンゲージメント活動を行っています。具体的には、下記のESG項目を企業に促しています。
E:Environment(環境)
- 気候変動問題:2050年ネットゼロを目標に掲げる経済活動。
- 自然資本・資源保護:自然資本・資源の使用量抑制、廃棄量削減及び適切な管理。
- 環境破壊・汚染防止:持続可能な調達拡大、プラスチック資源循環型モデルへの移行。
- 環境事業機会:環境対応による企業価値拡大と環境負荷低減の両立。
S:Social(社会)
- 人権:グローバル企業に対し人権問題のないサプライチェーンの構築の実現。
- 人的資本:多様な働き方の実現、製品・サービスの高付加価値化、人的生産性向上。
- 健康と安全:人的生産性向上に向けたウェルネス経営への移行、医薬品アクセス改善。
- サプライチェーン管理:サプライチェーンの可視化等による労働・環境・社会問題の解消・抑制。
- 社会事業機会:社会課題対応による企業価値拡大と社会課題低減の両立。
G:Governance(企業統治)
- 企業行動促進:持続的な企業価値向上のため、ESG情報開示や資本効率の改善。
- 安定・公正なガバナンス体制:持続的成長の基盤として安定性・公正性の高いガバナンス体制の構築。
- ガバナンス改革:ダイバーシティ経営推進、取締役会の実効性向上等により、積極果敢な執行の後押しとなるガバナンス改革。
※内閣府 知財投資検討会ご説明資料~投資家によるESG評価のフレームワークについて(PDF資料)~(三井住友トラストアセットマネジメント)
近年は、機関投資家も利潤を求めることのみを目的としていません。その社会的責任としてESG投資を通じて、環境(Environment)社会(Social)ガバナンス(Governance)に配慮した企業に積極的投資を行っています。ESGに取り組む企業が増えることで社会のサステナビリティ(持続可能性)が高まることが期待されることでしょう。
社会福祉法人悠久会が考えるサステナブル(持続可能)な社会づくりに必要なこと
ここまでは一般的な概念を含め、サステナブル及びSDGsを解説してきました。冒頭でもお話したとおりサステナブルな社会、すなわち持続可能な社会を実現させるには他人任せではなく自分事として、その実現のために努力する必要があります。当然、公益法人である社会福祉法人も例外ではありません。
そこで社会福祉法人悠久会が考える「持続可能な社会の実現」に向けて何をすべきかを整理して、まとめとさせていただきます。
サステナブルな社会づくりの重要性や必要性
なぜ、持続可能な社会をつくることが必要なのでしょうか?社会福祉法人悠久会では多数の障がいを持った利用者の方が地域で生活をしています。そもそも持続可能ではない地域において、充実した地域生活を送ることが可能なのでしょうか?
SDGsにおいては経済合理性だけではなく「誰一人取り残さない社会の実現」が掲げられている等、福祉課題との共通点も多いです。サステナブル及びSDGsを推進し、持続可能な社会をつくることは当法人及びその利用者達にとってもメリットがあるのです。福祉とまちづくりを別々に考えるのではなく、統合して考え、事業を推進することが重要なのです。持続可能な社会は福祉をも包摂しているからです。
サステナブルな社会づくりを目指して
「持続可能な社会づくり」「サステナブル」「SDGs」・・・とこれらのキーワードは、どこか崇高で敷居が高く思われがちですが、世界を変える第一歩は自分達の身近な生活を考え直すことから始めてもよいのです。事例でお示ししたとおり当法人のサステナブルな取り組みも費用がかかるものもありますが、日常生活で使用する物品を置き換える、日々の消費行動を少し見直す、買い物時の商品の選び方を工夫する等の小さな取り組みを継続することで十分な効果を得ることができます。
一人が壮大なサステナブルな取り組みを行うよりも10人、100人が・・と多くの人が小さな行動を起こす方が大きな成果を生むかもしれません。サステナブルな取り組みも持続可能性が大事であり、無理して一過性で終わらないように継続できるよう無理のない取り組みが重要なのです。
サステナブルな社会づくりに参加するために私たちができること
【サステナブルな社会づくりへの取り組み事例】
- 地産地消の推進:地域で作られた農産物等を購入する。
- フードロス削減:賞味期限の近い食品を購入したり、規格外野菜の購入。余った食品はフードバンクに寄付する。
- 省エネや再生可能エネルギーの活用:エネルギーの使用量を削減することで化石燃料の利用削減、再生可能エネルギーを使用することでCO2削減等につながる。
- シェアリングエコノミー:物やスキルや空間をシェアすることで無駄をなくし、多様な資産の有効活用につながる。
- プラスチック削減:プラスチックの使用量を削減することで化石燃料の使用量削減とプラスチックごみの廃棄による海洋汚染を減少させることができます。
サステナブル(持続可能)な社会づくりにおける社会福祉法人悠久会の役割や責任
公益性の高い社会福祉法人としてサステナブルな社会づくりの実現のために、どのような役割を果たしていくべきでしょうか?
例えば、当法人の強みである食の分野において地産地消を推進し地域の方々に地元食材を味わってもらう機会を増やす、サステナブルなライフスタイルの実践と提案を行い、積極的な情報発信により共感を得ることで地域の持続可能性を高めるお手伝いができると思います。
良質かつ多様な福祉サービスを提供を目指すことにより、SDGs1「貧困をなくそう」の低所得者への支援(生計困難者レスキュー事業の実践)、SDGs3「すべての人に健康と福祉を」(SDGs3取り組み事例)の社会的に弱い立場の人の生活を支えたり、SDGs11「住み続けられるまちづくりを」のように住み慣れた地域で生活を継続できるようにセーフティネットを構築する等(福祉とまちづくりの取り組み事例)を行うことでSDGsの各目標の達成に寄与することができます。
まとめ ~誰もが安心して暮らせるサステナブル(持続可能)な社会づくりを目指して~
社会福祉法人悠久会が目指す「あらゆる立場のすべての人々の心が通い合う社会」の実現。
その根底の考えとなるサステナブルとSDGs、持続可能な社会づくりについてお話をさせていただきました。
独特の用語や聞き慣れない言葉も多いため理解しにくい部分もあると思います。地域や世界をより良くしていく、子どもや孫世代が安心して暮らせるような社会を目指す、そのためには消費者マインドの変化や1人1人の小さな行動を継続することが大事だと思います。
共にサステナブルな社会に向けて取り組んでいきましょう。