SDGs目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」|長崎・島原での取り組みと事例

SDGs目標17「パートナーシップで目標を達成しよう(Partnerships for the goals)」この目標だけはSDGsの他の目標と相違点があります。それはSDGs目標17だけは他のSDGs16目標と全てリンクしており、まさにSDGsの特色を示した目標なのです。SDGsの目標実現のために、なぜSDGs目標17「パートナーシップ」が重要なのか。本記事ではその重要性と社会福祉法人悠久会での取り組みを踏まえ解説いたします。

パートナーシップ

SDGs目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」とは?

SDGs目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」とは「持続可能な開発のための実施手段を強化し、グローバルパートナーシップを活性化する」とも表現され、他のSDGs16目標と異なり、環境問題や貧困問題等の幅広い社会課題を解決し持続可能な開発を達成するための実施手段と体制を示しています。目標17には19のターゲットがありますが、その構成は「資金」「技術」「能力構築」「貿易」「体制面(政策・制度的整合性)」「マルチステークホルダー・パートナーシップ」「データ・モニタリング・説明責任」です。
参考:外務省HP「17: パートナーシップで目標を達成しよう」より

悠久会がSDGs目標17に取り組む理由

社会福祉法人悠久会がSDGs目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」に取り組む理由としては、当法人では「SDGsと福祉とまちづくり」をテーマに持続可能な社会づくりを目指しているからです。
しかし、理想とする地域共生社会を実現するためには様々な福祉課題及び社会課題の解決を図らねばなりません。当法人の専門分野である福祉課題でさえ制度・分野毎の縦割り主義のアプローチでは解決が難しく、分野横断の取り組みや様々な関係機関との連携等が必要とされています。さらに、まちづくりを進めるために社会課題の解決に取り組む場合は、社会福祉法人だけではなく、企業や行政、様々な民間団体等のマルチステークホルダーによる協働が求められます。

2030年までという限られた時間の中で「誰一人取り残さない社会の実現」「経済・社会・環境のバランスの取れた発展」を目指すSDGsの野心的な目標(ターゲット)を達成するには、一法人の自前主義では困難です。目標達成に向けマルチステークホルダーの共創によるイノベーションを起こす必要があります。

社会福祉法人悠久会では「SDGsと福祉とまちづくり」の推進及び「持続可能な社会づくり」を実現するために、SDGsで示す共通価値に基づくパートナーシップのもと、協力・連携・協働しながら福祉課題及び社会課題の解決を目指しています。このために、目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」は重要目標と位置付け、積極的に取り組む必要があると考えています。

  • 社会福祉法人悠久会のSDGsの取り組みについては「SDGs宣言」のページをご覧ください。

社会福祉法人悠久会のSDGs目標17の取り組み例

難しい言葉でパートナーシップを語るよりも、実際に悠久会がSDGsの目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」への取り組み事例と実際に取り組んでみて感じたメリットについて説明させていただけばと思います。

島原むすびすが取り組むパートナーシップ

島原むすびす店舗外観

おむすびカフェ島原むすびすは「地域と地域、福祉と地域をむすぶ、人と人をむすぶ」をテーマとした地元の島原及び島原半島の食材を活用したおむすびを提供しています。SDGsの取り組みを開始する以前から、社会福祉法人悠久会は地元食材の活用、地産地消にこだわってきました。

地元企業とのコラボ商品や「島原むすびす」ならではの地元食材を活用した独創的なおむすびにより地産地消の推進につなげ、フードマイレージの削減(CO2排出量の減少)による環境負荷の軽減及び地域経済循環率の向上に努めてきました。
これらの活動はパートナーシップが生んだSDGs推進の一例です。

また、地域おこし協力隊(当時)の火山女子の倉林さんと協働で、火山の恵みをイメージした「火山弁当」を開発しました。この弁当は第13回JR九州駅弁グランプリにて、コンセプトが評価され優秀賞を獲得することができました。地域のストーリー性と地元食材を活用した共通価値に基づくパートナーシップの好事例であると思います。

島原の食材をふんだんに使用した火山弁当
火山弁当
風光明媚火山弁当
風光明媚火山弁当

地産地消推進プロジェクトにおけるパートナーシップ

地産地消

社会福祉法人悠久会では地産地消を積極的に推進していますが、さらに推進するべく令和4年下半期に「地産地消コーディネーターの派遣(※1)」を受け、当法人の栄養士及び飲食部門を中心としたプロジェクトに取り組みました。

SDGsと関連も深い地産地消の推進においても、パートナーシップは重要です。法人内部においても栄養士部門及び飲食部門の事業所の垣根を越えた連携が生まれました。そして、法人外部とのパートナーシップにおいても、島原市役所や島原振興局といった行政の方にプロジェクトに参加いただき、地元食材の情報提供や地元産品を扱う直売所の紹介などをしていただきました。また、農家の方ともパートナーシップにより島原半島産の野菜を提供していただくことになりました。

当法人では地産地消に積極的に取り組む気持ちはあったものの、ノウハウが不足しており、今回派遣された地産地消推進コーディネーターの方のアドバイスを受けながら推進することができました。このプロジェクトのように自法人だけではなかなか前進しないプロジェクトでも法人の内外を問わないパートナーシップの発揮によりSDGsの推進につながりました。

具体的にはフードマイレージの削減、地産地消・地域経済循環率の向上により地域経済活性化、地方創生などのまちづくりの推進。福祉分野においても新鮮かつサプライチェーンが明確な(顔が見える生産者)安全な食事の提供、生産者とのつながり構築による社会関係資本の向上等の様々な効果がありました。

※1:令和 4 年度農山漁村振興交付金 農山漁村発イノベーション対策「地域の食の絆強化推進運動事業」(農林水産省)「令和4年度地産地消コーディネーター派遣事業

BYE BYE Plastic!プロジェクトにおけるパートナーシップ

BYE BYE Plastic!プロジェクト

さらに他団体(NPO法人蒼ノ扉)とのパートナーシップ事例として「BYE BYE Plastic!プロジェクト」があります。(※プロジェクト詳細は下記関連記事のリンク先ページをご覧ください)

SDGsの推進のためにプラスチックの削減や使い捨て文化の見直しをテーマに、オリジナルエコバックの製作を行いました。ロゴマークのデザインや、実際にバッグに印刷されるロゴマークのカラーなどの作成においては「障がい者アート」の推進のために、蒼ノ扉さんのメンバーの方にアートワークショップを開催してもらったり、シルクスクリーン印刷のレクチャーを受けました。

このような取り組みも自法人だけではクオリティの担保等が難しかったため、パートナーシップにより様々な効果が発揮できた事例であると思います。

食品ロス削減への取り組みにおけるパートナーシップ

また、食品ロスの削減の取り組みのパートナーシップの事例として「SECOND CHANCE VEGETABLE」プロジェクトを実施していました。(※現在はプロジェクト休止中です。詳細は関連記事のリンク先ページをご覧ください。)

食品ロスの問題解決に取り組むべく、廃棄予定の規格外野菜を集め、加工して商品化するプロジェクトでした。協力店舗に野菜を持ち込むことにより、お得な割引クーポンをもらえる仕組みでした。このように規格外野菜に着目し、食品ロス削減を目指すSDGsを推進するためのパートナーシップに取り組んだ事例もあります。

まとめ ~福祉課題及び社会課題を解決するマルチステークホルダーパートナーシップの実現~

SDGs目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」の定義から、社会福祉法人悠久会で実際にパートナーシップを通じてSDGsの推進につながった事例を中心にお話しました。

振り返ってみても、これらの取り組みは悠久会単独での実現は困難だったでしょうし、様々な価値観を有するマルチステークホルダーの違いと強みを活かした多面的アプローチが機能したからこそ実現できたと思います。これらのアプローチは、近年ますます複雑化する福祉課題や社会問題を解決するために有効な手段だと考えられます。

悠久会は「あらゆる立場のすべての人々の心が通い合う社会」を目指しています。そのためには、人とのつながりや地域社会とのつながりを構築することが大切であり、これを実現するためには、パートナーシップが重要です。パートナーシップを基軸として、多様なステークホルダーが協力し、SDGsという共通価値を持って取り組むことで、相乗効果が発揮され社会変革(ソーシャルアクション)が実現されるのではないでしょうか。

理想の社会を目指すには、自法人だけの経済的な利益だけではなく、地域社会全体(経済面・社会面・環境面)の利益を考えることが必要です。自分達の利害関係のみを考えず、公益性を重視する人とのつながり、すなわち社会関係資本(ソーシャルキャピタル)の充実が、福祉課題や社会課題を解決するための有効な手段であると考えられます。

社会的価値を生むためには、共創(コラボレーション)することが重要です。そのためにはビジョンを明確にし、ステークホルダーに情報発信を行うことで信頼関係を築く必要があります。対話とコミュニケーションを活発に行うことで、より多くの人々との協力関係が生まれやすくなり、より良き社会を実現することができるのではないでしょうか。

Sustainable Development Goals

悠久会は、持続可能な開発目標(SDGs)を推進しています。

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この記事を書いた人

永代 秀顕

〔プロフィール〕
社会福祉法人悠久会の理事長。大学で社会福祉を学び卒業時に社会福祉士(certified social worker)を取得。2005年入職、2019年より現職。
悠久会は長崎県の島原半島を中心に福祉事業を行っており、SDGsとまちづくりを含めた社会課題と福祉課題の同時解決に取り組んでいます。

〔保有資格〕
・認定社会福祉士(障がい分野)
〔活動等〕
・SDGsアンバサダー(日本青年会議所公認)として、自法人でSDGsの実践に取り組むと同時に、社会福祉法人が取り組むSDGsの事例等について講演や福祉業界紙への執筆活動等を行っています。
〔所属団体等〕
・(一社)長崎県社会福祉士会 (2016年~2019年 副会長)
・(一社)長崎県知的障がい者福祉協会 理事、九州地区知的障がい者福祉協会 理事
・(一社)島原青年会議所 第64代理事長(2020年 卒会)