社会福祉法人が取り組むまちづくり ~福祉とまちづくりとSDGs~ |SDGs目標11「住み続けられるまちづくりを」の実現のために

SDGs目標11「住み続けられるまちづくりを」を実現させるために解決すべき社会課題は山積みです。社会福祉法人悠久会がある長崎県島原市でも若者の地域外流出を要因とする人口減少をきっかけとする地域の活力低下が大きな社会課題です。これからも住み慣れた地域で暮らし続けるにはどうしたらよいか?地域の持続可能性を高めるための、SDGsの視点を活かした「福祉とまちづくり」のアプローチは福祉施設の利用者のみに適用されるものではなく、地域で暮らす我々も含めた地域のウェルビーイングを高めるために必要なことです。

本記事においては、「福祉のまちづくり」「SDGsとまちづくり」を統合した、社会福祉法人悠久会が取り組む「福祉×まちづくり×SDGs」について、まちづくりの定義やSDGs取り組み事例をもとに解説して参りたいと思います。

まちづくりとは ~まちづくりの定義から紐解く~

まちづくりの定義

「まちづくり」と言っても、具体的にはどのような活動を示すのでしょうか?行政がトップダウンで推し進める大規模な建築物を建設することでしょうか?もしくは、住民の生活利便性を高めるために道路の整備や様々なインフラを整えることでしょうか?公共建築物やインフラ整備で生活の利便性は向上しますが、ハード面の整備のみでは都市部への若者の流出、人口減少、地域の活力低下によるコミュニティの弱体化等の社会課題が解決すると断言できません。これを「福祉のまちづくり」という観点で適用させますと、福祉施設の整備さえ行っておけば地域の福祉課題が全て解決すると言い切ってしまうことと同義です。福祉やまちづくりの分野では、ハード面のみならずソフト面の取り組み等も必要なのです。

まちづくりについては明確な定義が定められておらず、まちづくりに関わる様々な方の引用や資料等を基に定義付けていきたいと思います。例えば佐藤滋氏は「まちづくり」の定義について下記のように述べています。

地域社会に存在する資源を基礎として、多様な主体が連携・協力して、身近な居住環境を漸進的に改善し、まちの活力と魅力を向上して「生活の質の向上」を実現するための一連の持続的な活動である”

佐藤滋 日本建築学会(2004)『まちづくりの方法』

と、まちづくりを上記のように定義しています。1970年代以前のまちづくりは行政のトップダウン型の都市計画が中心でしたが、1970年代以降は住民主導型のまちづくりも盛んになってきました。まちづくりは行政といった特定の主体のみではなく多様な主体(住民、行政、企業、学校、町内会等)によって行われるものです。当然に我々、福祉専門職等の地域福祉に携わる者もまちづくりのプレーヤーの一員です。

さらに「まちづくりの10の原則」では、

①公共の福祉の原則 ②地域性の原則 ③ボトムアップの原則 ④場所の文脈の原則 ⑤多主体による協働の原則 ⑥持続可能性、地域内循環の原則 ⑦相互編集の原則 ⑧個の啓発と創発性の原則 ⑨環境共生の原則 ⑩グローカルの原則

「まちづくり10の原則」日本建築学会編(2004)『まちづくりの方法』

上記のように10つの原則が掲げられています。地域住民の生活環境・生活の質の向上、都市計画のみではなく地域住民のアイディアや草の根運動等のボトムアップを重視するべきであることが述べられています。この原則が掲げられたのはSDGsが成立する以前の2004年頃ですが、SDGsと共通する原則がすでに掲げられており、多様な主体と協働すること(マルチステークホルダー・パートナーシップ)地域の持続可能性や地域内循環(サステナビリティや地域経済循環)経済発展のみではなく環境面の共生も考えること等(地域循環共生圏-ローカルSDGs、農村漁村と都市の相互補完による相乗効果)まちづくりとSDGsの関連性も相互補完的と言えるのではないでしょうか。

SDGsとまちづくり ~SDGsまちづくり事例~

「SDGsとまちづくり」に関しては、社会福祉法人悠久会でのSDGs取り組み事例等を「SDGs目標11「住み続けられるまちづくりを」」の記事にて説明させていただきました。「包摂的で安全かつ強靱(レジリエント)で持続可能な都市及び人間居住を実現する」に対し、社会福祉法人悠久会では記事の中で下記の取り組みを行っています。

社会福祉法人 悠久会が取り組む「SDGs目標11 住み続けられるまちづくりを」

  • 安全安心
    福祉サービスを提供することにより、安心して暮らせるまちづくりへの貢献と、防災時には耐震対策を行っている入所施設等により安全面もカバーする(台風などの災害発生時には地域住民の避難も受け入れる)
  • 包摂性と持続性
    多種多様な属性の人達、障害を持っていても力を発揮できる環境作りを行うことで誰もが活躍できるまちづくり、地産地消も含めた地域経済の活性化等に貢献することで地域の持続可能性(サステナビリティ)の向上に貢献する。

上記の取り組みを中心にSDGsとまちづくりに貢献していることを説明させていただきました。
さらに上記の「まちづくりの定義」を考慮し、「SDGsとまちづくり」深掘りしていくと「ローカルSDGs(地域循環共生圏)」の概念からも、その取り組みを説明することができます。

社会福祉法人 悠久会が取り組むSDGsまちづくり事例 ~ローカルSDGs(地域循環共生圏)を中心に~

ローカルSDGs(地域循環共生圏)とは環境省が提唱しており、地域の自然資源、歴史・文化、観光資源等の様々なコンテンツを持続的な活用を行い、都市対地方という二項対立ではなく、自立・分散、持続可能なまちづくりを行う概念です。先ほど、紹介しました「まちづくりの10の原則」と共通する内容も掲げられています。
「モノ消費」から「コト消費」へのシフト。文化・芸術・歴史・スポーツ等での共感及び感動創造、地域課題解決型のビジネスの実施(地域資源の活用や観光資源、地域人材育成等)等が掲げられています。

地域循環共生圏_ローカルSDGs

参考:2019年11月20日/環境省-地域循環共生圏(ローカルSDGs)(PDF)

これらの地域の資源を活かしたコト消費及び地域課題解決を目指す、社会福祉法人悠久会の取り組み事例として、

(1)地産地消のおむすびカフェ「島原むすびす」と観光コンテンツへの貢献

島原むすびすにおいては、島原鉄道が運行する観光列車※1「しまてつカフェトレイン」において、「島原半島ユネスコジオパーク」として豊かな火山の恵みの恩恵をモチーフにし、地域おこし協力隊と共同開発した※2「火山弁当」を提供しております。

島原鉄道カフェトレイン

※1 しまてつカフェトレインとは?
諫早駅から島原駅間の約40kmの区間を、島原半島の鉄道沿線の風景を眺めながら地元グルメやスイーツを楽しめる観光列車です。

※2 火山弁当とは?
火山弁当は火山の恵みをイメージした弁当で、第13回九州駅弁グランプリにて優秀賞を受賞しました。

さらに、島原市においては映画やテレビのロケを呼び込み地域を活性化するロケツーリズムを推進しており、ロケ隊へのお弁当として島原むすびすの「風光明媚火山弁当」がロケ弁当として提供されることもあります。

(2)地域活性型イベント ~焚き火イベント~の開催

社会福祉法人悠久会は島原市の中心市街地から車で10分もかからない場所にアウトドアが可能な森スペース(山の上カフェGarden敷地内)を保有しています。ローカルSDGsが掲げる地域の自然資源を活かしたコンテンツ作りの一環として焚き火イベントを開催いたしました。地域経済活性化の起爆剤とするべく当法人の保有資源を活用したアウトドアコンテンツ開発も目標の1つとして掲げており、アウトドア飯として島原むすびすより「肉巻きおにぎり」はなぞのパン工房より、「まきまきパン」を開発・販売いたしました。まきまきパンはお客さん自身が焚き火でパンを焼き上げる体験型コンテンツで、焚き火イベントのコンテンツとして手ごたえを感じる商品だと感じました。都市部では自然豊かな環境で気軽にファイヤーピット(焚き火)とアウトドア飯を体験する機会は少ないはずであり、地方ならではのコト消費(体験型コンテンツ)であるかと思います。

(3)アートイベント ~みんなのフェス~の開催

アートを活かしたまちづくりの事例は有名なものとして「瀬戸内国際芸術祭」を始め、枚挙にいとまがありません。社会福祉法人悠久会ではYDGs目標15「彩り豊かな生活を」において文化・芸術活動の推進を掲げています。先ほどの焚き火イベントと同様に自然豊かな森スペースの中で障がい者のアート作品を展示し、森の中を散策しながらアート作品を体感できる、障がいがある人もない人も共に楽しめるアートイベント「みんなのフェス」を開催いたしました。地域資源を活用した1つのコンテンツであり、今後も展開次第で地域活性化やまちづくりに貢献できるものではないかと思います。

福祉のまちづくり ~福祉とまちづくりの相乗効果を目指して~

福祉のまちづくり

障害福祉分野の歴史を辿れば、過去の障害福祉政策は郊外型の入所施設整備が中心であり、地域との接点やまちづくりへの関与がほとんどありませんでした。しかし、障害福祉理念の推進及び法改正により地域福祉の推進、地域共生社会の実現等が目指されることで地理的にも、まちとの接点も増加しました。さらに就労支援も推進され、地方では若年層流出による労働者不足の結果、障害を持った方々が地域経済へ参画する機会も増えました。このような状況のなか、おそらく一般の人が描く「福祉=介護(身体介護中心)」のみでは福祉を語り尽くせません。現在は、多様な福祉の姿が見られます。

ソーシャルワークの分野においても地域福祉推進時代の現在、ミクロ(個別支援)中心ではなく、福祉のまちづくりを推進するべく、メゾ領域、マクロ領域にも積極的に取り組まなければなりません。近年はマクロソーシャルワーク分野も注目されるようになりました。あらためて、福祉のまちづくりとは何か?について深掘りしていきたいと思います。

福祉のまちづくり条例

地方自治体が定める「福祉のまちづくり条例」を調べてみると高齢者・障がい者等を対象とし「特定生活関連施設」「公共車両等」について言及しています。
特定生活関連施設とは公共施設や医療施設、社会福祉施設、不特定多数の人が利用する施設を総称するもので、福祉のまちづくり条例においては施設や建物の整備を中心(バリアフリー)としたハード面の施策であることがうかがえます。
これまでの流れを辿ると、旧ハートビル法(1994年施行)を契機に福祉のまちづくり条例が全国的に制定され、建築物や公園等の特定生活関連施設のバリアフリー化が進むことになりました。そして、現在はハートビル法と交通バリアフリー法が統合されたバリアフリー法が施行され、

関連法律:福祉のまちづくり ~バリアフリー法について~

前述したとおり、まちづくりの定義としてはハード面の整備のみではありませんので、地域共生社会の推進ためのソフト面への取り組みにも着目する必要があります。バリアフリー法の近年の改正(平成30年及び令和2年)においては、ハード面のみならず「心のバリアフリー」に着目した項目が追記されています。
(ハード面のみならず、共生社会を推進する関連法令としては合理的配慮を推進する「障がい者差別解消法(内閣府)」等もあります。)

地域共生社会を推進する福祉のまちづくり

福祉のまちづくり条例に関しては、初期は物理的バリアフリーの解消が中心としたものでした。しかし、ハード面の整備が推進され、建物等のバリアフリー化が充実しつつある現在、ソフト面も重視した福祉的取り組みにも着目されています。このトピックではソフト面について解説いたします。

心のバリアフリーを体現する3つのポイント

ユニバーサルデザイン2020行動計画」においては「心のバリアフリー」の考えが示されています。この考えを体現するにあたり3つのポイントが示されています。

  • 障がいのある人への社会的障壁を取り除くのは社会の責務であるという「障害の社会モデル」を理解すること。
  • 障がいのある人(及び家族)への差別(不当な差別的取扱い及び合理的配慮の不提供)を行わないよう徹底すること。
  • 自分とは異なる条件を持つ多様な他者とコミュニケーションを取る力を養い、すべての人が抱える困難や痛みを想像し共感する力を培うこと。

参考:ユニバーサルデザイン2020関係閣僚会議

障害の社会モデルについて

「障害の社会モデル」とは、「障害」は個人の心身機能の障害と社会的障壁の相互作用によって創り出されているものであり、社会的障壁を取り除くのは社会の責務である、とする考え方。
 「ユニバーサルデザイン2020行動計画」では、「障害の社会モデル」を全ての人が理解し、自らの意識に反映させ、具体的な行動を変えていくことで、社会全体の人々の心の在り方を変えていくことが重要であり、また、この「障害の社会モデル」の考え方を反映させ、誰もが安全で快適に移動できるユニバーサルデザインの街づくりを協力に推進していく必要がある。

参考:国土交通省「心のバリアフリー/障害の社会モデル

社会福祉法人悠久会の福祉のまちづくりに関する基本的視点

近年の社会課題の複雑化により、単一の福祉サービスの提供のみでは多様な福祉ニーズ等を満たすことはできません。さらに地域共生社会の実現や地域福祉を推進するためには、福祉事業所内だけではなく、まちに対するアプローチも必要不可欠であると社会福祉法人悠久会はとらえています。

地域福祉推進とまちづくり視点と融合したソーシャルワーク ~まちづくりとソーシャルワーク~

地域福祉を推進するためには単一、縦割りの福祉サービスの提供では不十分であり、業種や分野の垣根を超えたソーシャルワーク機能を発揮し、横断的なジェネラリストアプローチで取り組む必要性があります。個別支援(ミクロ)のみではなく、その人を取り巻く環境(個人と社会の相互作用)を俯瞰的にとらえ地域全体をシステムズアプローチで認識する。
近年、マクロソーシャルワークが注目されつつあるのも、地域共生社会の実現にはミクロの実践(個別支援)のみでは不十分であるからです。個人だけにアプローチするのではなく、地域コミュニティ等も含む広範囲の領域にアプローチする必要性があると考えられるからです。また、個人か社会を別々にとらえ、アプローチ手法を考えるのではなく、交互作用や関係性に注目し働きかけることもソーシャルワークの基本的視座となります。これらのソーシャルワークの概念は「多様な主体や多様な関わりに働きかけていく」という、まちづくりに必要な視点とも共通するのではないでしょうか。

まちでの暮らし(地域生活)をどうとらえるか?

利用者支援では「生活を支える」視点が基本となります。地域福祉において「生活」を送る「場」についてあらためて考えてみましょう。我々の日常生活(まちでの暮らし・地域生活)は、家庭-職場-地域・社会と多様なフィールドで活動しています。自宅から一歩も出ず、誰とも関わらずに生活が完結することは社会生活と呼べるでしょうか?
つまり、私たちの「生活」は孤立した場ではなく、家庭や職場、地域といった様々な結びつきを包括して「生活の場」と呼べるのです。すなわち、地域生活とは、単なる立地的条件を示すのではなく、人との繋がりや交流が生まれる場であることが条件だと言えます。逆につながりや交流が全く存在しない個別の住宅が多数、一定の範囲内に存在したところで「地域社会」とか「地域生活」の場を構成しないのではないかと思われます。

「地域福祉」を推進すると、今まで地域に関わりを持つことが少なかった人達の居場所を作られ、社会的包摂が実現されるでしょう。その結果、繋がりや交流の場が生まれ、地域社会で共に生活することで、お互いに支え合うなどのインフォーマルなサポートも期待でき、地域生活の質が向上します。すなわち、地域福祉の実践の目的として利用者の生活を支えるだけではなく、地域住民を含めた相互に支えあう福祉文化を醸成することで、地域全体の福祉コミュニティを豊かにすることが求められています。
こうした視点に立つと、福祉の場でも「生活の場」は入所施設やグループホーム内で完結させず、むしろ、まちや地域全体を包括した「生活の場」として拡張させるべきなのです。まちを構成する要素は地域住民、町内会等の地縁コミュニティ、企業や商店等の地域経済を構成する組織などが含まれます。さらに文化、歴史、風土等もまちづくりには欠かせません。地域生活(まちでの暮らし)は一定の区域内における、ありとあらゆるものを含みます。これらの要素と社会的に関わりながら生活することが地域共生社会における障害を持つ方々の「地域生活」と呼べるのではないでしょうか。福祉事業所内だけではなく、地域全体が利用者の生活を豊かにし、また、地域住民とも良好な関係で相互に関わることで皆が心豊かに安心して暮らせる福祉のまちとなるのではないでしょうか。

福祉における地域づくり ~地域共生社会の実現に向けて~

ここまで、地域福祉・地域生活及び地域共生社会等のキーワードをもとに紹介してきましたが、福祉のまちづくりを説明する中で、重要な福祉理念の一つである「地域共生社会」について説明をいたします。まずは、厚生労働省の下記イメージ図がわかりやすくまとめてあるのでご参照ください。

地域共生社会イメージ図。
「地域共生社会とは」
制度・分野ごとの「縦割り」や「支え手」「受け手」という関係を超えて、地域住民や地域の多様な主体が「我が事」として参画し、人と人、人と資源が世代や分野を超えて「丸ごと」つながることで、住民1人1人の暮らしと生きがい、地域をともに創っていく社会。

参考イメージ:2019年12月26日「地域共生社会に向けた包括的支援と多様な参加・協働の推進に関する検討会」(地域共生社会推進検討委員会)資料より

上記の定義から地域共生社会とは、
「障がい・高齢・児童等と分野毎の縦割りで考えるのではなく、福祉の課題について自分事としてとらえ、多様な主体の協働や多様な社会資源を活用して、地域住民一人ひとりが充実した生活を送れるように、共に創る社会」であると言えると思います。
この取り組みが必要とされる要因は、これまでも述べてきましたように、個人や世帯が抱える生きづらさの複雑化及び多様化(社会的孤立や8050問題等)が見られ、従前の福祉サービスの対応だけでは解決につながらないケースが出てきました。その要因として福祉や地域を取り巻く環境として「共同体機能の弱体化、人口減による担い手不足」等があり、福祉の領域を超えた新たなアプローチが必要とされるようになりました。

また、『「我が事・丸ごと」の地域作りについて』(厚生労働省)においては、地域共生社会を実現するにあたり、どのように地域づくりや福祉のまちづくりについて取り組むべきかという視点をもとに説明がされています。

地域づくりの3つの方向性
  • 「自分や家族が暮らしたい地域を考える」という主体的、積極的な姿勢と福祉以外の分野との連携・協働によるまちづくりに広がる地域づくり
  • 「地域で困っている課題を解決したい」という気持ちで、様々な取組を行う地域住民や福祉関係者によるネットワークにより共生の文化が広がる地域づくり
  • 「一人の課題から」、地域住民と関係機関が一緒になって解決するプロセスを繰り返して気づきと学びが促されることで、一人ひとりを支えることができる地域づくりという方向性は、互いに影響を及ぼしあうものということができる地域づくり

参考:「我が事・丸ごと」の地域作りについて(PDF) 厚生労働省

社会福祉法人悠久会の福祉のまちづくりへの取り組み

障がいを持っていてもいなくても「誰もが安心して住み暮らせるまち」地域共生社会の実現のために、前述したとおり福祉のまちづくり条例等により物理的バリアの解消。グループホームの推進により福祉事業所の立地も街中で展開されるようになったものの旧来の地域福祉時代以前から見られる差別や偏見及び社会的分断、これらの完全解消には至っていません。「心のバリアフリー」等の心理的バリアの解消が必要なのです。「地域共生社会」における理想とする福祉社会の実現のためには、地域の身近な福祉コミュニティの充実が必要であり、政策や制度だけでの実現は難しく、我々福祉関係者のみではなく、地域住民が主体的に福祉コミュニティに参画及び協働することが求められるでしょう。我々は、福祉と地域の接点を増やす取り組みを行うことから福祉のまちづくりに貢献していきたいと思います。

福祉のまちづくりの実現のために社会福祉法人悠久会ができること

SDGs活動を通じて、積極的に地域社会に貢献すること

障害を持った人達はただ支援を受けるだけではなく、その持てる力を最大限に発揮して地域社会に貢献することもできます。地域のコミュニティの一員となるには市民の義務を果たすことも求められます。支えあいは一方的な支援を求めるものではなく、相互に支援し互恵的であるべきです。社会福祉法人悠久会では積極的に地域の社会課題を解決するべくSDGsを推進しており、様々な活動に利用者の方々も参画することで地域社会への貢献を行っています。

悠久会では下記のSDGs推進活動を行っています。

  • より詳細にSDGsの取り組みをご覧になりたい方は下記の「社会福祉法人悠久会のSDGsの取り組み」のページをご覧ください。

長崎県福祉のまちづくり賞の受賞

2023年3月20日に長崎県庁にて「令和4年度長崎県福祉のまちづくり賞」の表彰式が開催されました。社会福祉法人悠久会の島原駅周辺の清掃活動等が評価され、活動部門での受賞となりました。

障がいについての理解促進と啓発 ~差別と偏見を防ぐために~

障がいへの誤解又は知識不足ゆえに差別や偏見につながっている可能性もあるため、社会福祉法人悠久会では積極的な情報発信として、下記の障がい特性について学べる記事を執筆したりと情報発信に力を入れています。また、福祉事業所見学及び学生さんのインターンの受け入れ等も積極的に行っています。

「障がいについて学ぼう」の記事一覧
大学生等の福祉を学びたい学生さんの受け入れ ~福祉インターンシップの開催の様子~

社会福祉法人悠久会では福祉インターンシップとして大学生向けのインターンシップの開催及び高校生向けの福祉の仕事の学びツアーやボランティア体験を受け入れています。

  • 社会福祉法人悠久会では大学生向けのインターンシップを開催しています。(2024インターンシップについては下記よりご確認ください。)

地域経済活動への参画

社会課題の1つに地域経済活動の衰退があります。社会福祉法人悠久会では、課題解決のために地域内経済循環率の向上に取り組んでいます。地域内経済循環率を高める取り組みを行って実感することは例えば島原むすびすの事例においては積極的に地元の取引先の活用と交流が生まれることにより、地元の方々に障害を持った方の就労支援の実態を理解してもらうことができます。悠久会では就労支援等で様々な企業や取引先等と関わっており、地域経済に積極的に関与しており、これらは障がいを持った方々の社会参加の推進にもつながっています。

まとめ ~福祉とまちづくりとSDGsの可能性~

これまで「SDGsとまちづくり」「福祉とまちづくり」について、その定義や実際の取り組み事例をもとに説明をさせていただきました。
社会福祉法人悠久会では「福祉×SDGs×まちづくり」と統合したアプローチをもとに事業を展開しています。ここでは、「福祉」「SDGs」「まちづくり」を統合して取り組む理由とその可能性について説明させていただきたいと思います。

「福祉とSDGsとまちづくり」を統合する理由

「福祉」と「SDGs」と「まちづくり」は個別バラバラの課題ではなく、相互に関連・共通している問題も多いから。

例えば福祉分野では、生活困窮者支援の場面で、単一の福祉課題だけではなく、家族それぞれで課題を抱えているケースがあります。失業による貧困や、引きこもり、家庭内介護、病気等の疾病や認知症、障がい、教育や療育・・・等、障がい・高齢・児童等と福祉の分野を横断する課題だけではなく、地域やコミュニティに関連する社会課題も含んでいる場合があります。
ゆえに旧来の単一福祉サービスのみの提供では、根本的解決にはつながらず横断的に社会資源を活用するケアマネジメント、福祉コミュニティのインフォーマルなサポートの活用、地域の社会課題解決のためのまちづくり的アプローチ等の様々な視点や手法による解決が求められるかもしれません。SDGsではバラバラで考えがちな福祉的視点とまちづくり的視点を包括して捉えることができるでしょう。
(悠久会では実際に生活困窮者支援に取り組んでいます。詳細はこちらの記事よりご覧ください。)

本記事では、社会福祉法人悠久会のSDGs取り組み事例を紹介してきましたが、地域活性型イベント等の事例(ローカルSDGs)で示しているように、障がいを持った方々の社会参画及び理解促進啓発活動につながると同時に地産地消のアウトドアコンテンツの提供を通じて、地域経済循環による地域経済活性化等、まちの課題解決にもつながるという福祉課題と社会課題を同時解決するといった取り組みが、「福祉×SDGs×まちづくり」の統合した取り組みの一事例であると思います。

社会福祉法人の持つポテンシャルをまちづくりの推進とSDGs推進に活かす

社会福祉法人はサービスの利用者数及び雇用される職員数も多く、SDGsに関連する(地産地消の「食」・インフラ・雇用・エネルギー利用、資源の使用等)あらゆる要素を包括している事業体です。また、職員等も実際にまちに暮らす市民として、日々の暮らしを営んでいます。
その法人数(20,655法人※3)や有する人的物的資源などのポテンシャルを考慮すると、全国の社会福祉法人がSDGsに取り組むことで社会へ大きなインパクトを与えることが可能であると思います。
また、基本的には社会福祉法人は地域に密着した法人が多いと推測されますので、地域に身近な社会福祉法人がまちづくりに取り組むことで、地域にポジティブな影響を与えることができることでしょう。
(※3:WAMNET 2021年度)

「福祉×SDGs×まちづくり」で持続可能な地域づくりに貢献する

これまで述べてきたように地域には様々な社会課題及び福祉課題が存在しています。しかし「福祉×SDGs×まちづくり」の統合したアプローチを実施することにより、社会課題及び福祉課題の同時解決が可能になると思います。社会福祉法人悠久会ではYDGs目標15「彩り豊かな生活を」目指すべき方向性として掲げています。地域で持続可能な豊かな生活を送るためにはどうすればいいか?を考えていきたいと思います。

「豊かな生活」とは何か?

豊かな生活と聞くと、経済的豊かな生活をイメージする方も多いと思います。しかし、SDGsにおいては「経済・社会・環境のバランスの取れた発展」と必ずしも経済的豊かさのみを追い求めているのではありません。経済的に豊かになることで、ハード面の充実等により解決できる課題はあると思いますが、ソフト面の課題解決は経済的豊かな都市部においても社会的孤立等の社会課題は存在することから経済的豊かさのみが全ての社会課題解決につながるとは言い切れません。

豊かさを考えるうえで、心身及び社会的にも満たされた幸福な状態を示す「Well-being(ウェルビーイング)」及び経済的豊かさを測定するGDP以外に生活の質を計測する「より良い暮らしの指標(BLI=Better Life Index)」において住宅、所得、雇用、社会的つながり、教育、環境、市民参画、健康、主観的幸福、安全、ワークライフバランスの11分野を評価できることはYDGs目標15「彩り豊かな生活を」の解説記事において説明させていただきました。着目すべきは「社会的つながり」「市民参画」の項目が豊かさの指標の一つに掲げられていることです。

地域共生社会の実現のため土台となる豊かな社会関係資本(ソーシャルキャピタル)

地域福祉を推進するには福祉関係者や利用者のみではなく、地域住民も含め福祉課題を「我が事・丸ごと」としてとらえ、皆で取り組むことが大事であると語られています。協働して取り組むためには、地域とのつながり及び地域コミュニティの充実が必要です。その土台である豊かな社会関係資本(ソーシャルキャピタル)が充実していることで、相互の信頼関係に基づいた自発的な協力や助け合いが生まれやすく共生社会の実現に結びつくことでしょう。

社会福祉法人悠久会においても、地域との関わりを増やし、社会関係資本の充実に寄与できるように福祉活動を通じたSDGsとまちづくりの推進に取り組んで参ります。

まとめ

持続可能な地域及び福祉社会の実現に向けて「福祉×SDGs×まちづくり」の統合的アプローチに取り組むことで、福祉関係者以外も含めた地域住民とのパートーナーシップをもって、地域共生社会の実現に寄与するとともに、我々が目指す「あらゆる立場のすべての人々の心が通い合う社会」を実現させたいと思います。

福祉と地域の垣根のない社会を築き上げ、地域全体のウェルビーイングの向上と心豊かなライフスタイルの実現することが「福祉とまちづくり」の活動目標です。

社会福祉法人悠久会では「福祉とまちづくりとSDGs」を体感できるインターンシッププログラムを用意しています。

「福祉とSDGsとまちづくり」の小冊子を発刊いたしました。

Sustainable Development Goals

悠久会は、持続可能な開発目標(SDGs)を推進しています。

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この記事を書いた人

永代 秀顕

〔プロフィール〕
社会福祉法人悠久会の理事長。大学で社会福祉を学び卒業時に社会福祉士(certified social worker)を取得。2005年入職、2019年より現職。
悠久会は長崎県の島原半島を中心に福祉事業を行っており、SDGsとまちづくりを含めた社会課題と福祉課題の同時解決に取り組んでいます。

〔保有資格〕
・認定社会福祉士(障がい分野)
〔活動等〕
・SDGsアンバサダー(日本青年会議所公認)として、自法人でSDGsの実践に取り組むと同時に、社会福祉法人が取り組むSDGsの事例等について講演や福祉業界紙への執筆活動等を行っています。
〔所属団体等〕
・(一社)長崎県社会福祉士会 (2016年~2019年 副会長)
・(一社)長崎県知的障がい者福祉協会 理事、九州地区知的障がい者福祉協会 理事
・(一社)島原青年会議所 第64代理事長(2020年 卒会)