ジョブカード研修レポート ~強みを発見し、福祉キャリアを充実させる~

ジョブカード1は、自分のキャリアの棚卸しと、キャリアデザインを支援する、厚生労働省が推奨するツールです。キャリアプランシート職務経歴シート職業能力証明シートの3種類で構成されており、自分の強み・価値観・経験を可視化し、主体的にキャリア形成を行うことができます。

“福祉職のキャリアデザインとは、そもそも何を指すのでしょうか?”
ジョブカード研修を深掘りする前に、キャリアそのものの考え方や基礎を押さえたい方は、下記の記事もおすすめです。

ジョブカード研修の目的と効果について

  • 現在の自分を知り、過去の自分を振り返り、将来像を描く。
  • ジョブカードを活用して、キャリア形成の第一歩を踏み出す。
  • 「自分満足度(ES)」を高め、福祉プロフェッショナルとしての成長を目指す。

この記事では、福祉職としてキャリアデザイン悩む方々に向けて、ジョブカード研修の全体像から、具体的な活用法、ES向上のメカニズムについて解説しています。ジョブカード研修は、福祉職としてのキャリアに悩む若手から、人材育成に課題を抱える管理職の方まで、幅広い職層の方が対象となるでしょう。福祉キャリアを振り返り、職場での新たな目標を設定することは、個人のキャリアアップだけではなく、従業員満足度(ES)向上及び顧客満足度(CS)向上の達成にもつながります。今回は、その具体的なプロセスを解説いたします。

キャリア形成・リスキリング支援センターによるキャリアコンサルティング・キャリア研修(ジョブカード研修)

本ジョブカード研修は厚生労働省が委託するキャリア形成・リスキリング支援センターによる企業向け「人材育成・定着促進等支援」(人と組織の活性化につながるキャリア形成と能力開発の支援)2に基づき行われました。企業や団体を対象キャリアコンサルティングやキャリア研修、セルフキャリアドッグの導入支援を無料で受けられる仕組みとのことでしたので、社会福祉法人悠久会でも本研修を無料で開催することができました。

全国各地3にキャリア形成・リスキリング支援センター及び相談コーナーはありますので、気になる方は所在地の支援センターにお問い合わせを行うとよいでしょう。

今回のジョブカード研修の講師は、長崎キャリア形成・リスキリング支援センターよりキャリアコンサルタントの永田氏により行われました。

そもそもジョブカード制度とは? ~福祉職のキャリア形成に役立つツール~

ジョブカードは、多様な人材が個人のキャリアアップと就職活動を円滑にするために設計された様式です。厚生労働省が推進する「生涯キャリア形成」を支援するためのシステムであり、キャリアコンサルティングなどの専門職のサポートを受けながら「生涯を通じたキャリアプランニング」及び「職業能力証明シート」でスキルを可視化することができます。求職活動や職業能力開発などで活用できる制度です。

ジョブカードは、求職活動における職務経歴書作成の場面でしか活用しないものではありません。在職者のキャリアデザインや職場内でのOJTやOff-JTの効果測定の検証を含め、幅広く活用できるのがジョブカードの特徴です。

ジョブカードの特徴と福祉職のキャリア形成での活用意義

  • 小さなカードではなく、総合的なツール群の総称。
  • キャリアプランシート、職務経歴シート、職業能力証明シート(資格・免許、学習歴・訓練歴)から成る。
  • 今回のジョブカード研修では「就業経験がある方」のキャリアプランシートを使用。
ジョブカード様式1-キャリアプランシート
ジョブカード様式2-職務経歴シート
ジョブカード様式3-職業能力証明シート

ジョブカード研修では、キャリアコンサルタントの支援のもと、これらのシートを作成しながら自分のキャリアを体系的に見つめ直すプロセスを体験します。特に福祉職の方は、日々の業務で見失いがちな「自分の強み」「キャリアの方向性」を再認識する機会となるでしょう。

このようなツールが必要とされる背景には、福祉職におけるキャリア形成の難しさがあります。次章では、若手福祉職が直面する具体的なキャリア課題について述べていきたいと思います。

補足:「キャリア」についての用語説明

キャリアの語源は「わだち」

キャリアとは?

  • 「人生そのもの」「様々な立場・役割の連鎖とその過程」
  • キャリアの語源は「わだち」=自分で道を切り開いていくもの。

キャリア形成とは?

  • 将来の「なりたい自分」を明確にし、その実現に必要なスキルや強みを獲得していくプロセス。
  • 例:「仕事の時間を楽しくしたい」→自分の才能を活かすために自己理解を深める、コミュニケーション能力を向上させる、主体性を身に付ける、とらえ方の転換

若手福祉職がつまずく3つのキャリア課題とは?

福祉職の離職率は13.1%4と改善傾向にあるものの、特に、入職間もない若手職員ほど「自分のキャリアをどう構築すればよいのか」という道筋が見えず、悩むケースも少なくありません。下記の課題は、自主性の欠如、スキルアップの停滞、モチベーションの低下を引き起こす要因となり、時には離職につながることもあります。

キャリア課題1:キャリアが見えない

文部科学省の定義では、キャリアとは「人生そのもの」を意味します。人生という航海では羅針盤がなければ、広い海をただ漂うばかり。自分が目的に向かっているのか、それとも遭難しているのか。見えないことは不安を招きます。特に若手福祉職は、自ら長期的なキャリアパスを描くための知識や経験を持たないため将来の展望を持ちづらい状況なのではないでしょうか。

キャリア課題2:作業と仕事の混同

福祉現場では「作業」と「仕事」の違いが曖昧になりがちです。「作業」とは指示されたとおりにこなすこと。一方、「仕事」とは自分で考え、付加価値を加えること。言われたことを淡々とこなすだけでは「作業」で終わってしまいます。自律的に考え、自ら提案や行動を起こさない限り、業務に面白さも、自分自身の成長も生まれません。

キャリア課題3:ES(従業員満足度)の低さがCS(顧客満足度)の低下につながってしまう

従業員満足度(ES)が向上しなければ、サービスの質も上がらず、結果として顧客満足度(CS)も低くなります。ESとCSは車の両輪のようなもの。どちらかが落ち込むと、職場の活力もキャリア向上意欲も下がり、負のスパイラルが生まれてしまう可能性があります。

これらの3つの課題は、単なる「若手職員あるある」ではなく、福祉専門職として「キャリア観」が形成されていないことから生じる問題です。では、なぜ自分でキャリア観を形成する必要があるのでしょうか?

やらされ感からの脱却 ~キャリア形成に必要な内発的動機づけとは~

次の2つの状況でしたら、どちらがあなたの仕事(研修)への取り組みに自律的(前向き)に取り組めるでしょうか?

  • 外発的動機づけ:「上司からやれと言われたので、仕方なく研修に参加する」
  • 内発的動機づけ:「より良い仕事をするために、自ら学び成長したい」

どちらが自分自身の満足度、人生の充実度が高まるでしょうか?

内発的動機づけがある場合、人は自ら創意工夫し、困難にも粘り強く取り組み、達成感や仕事への満足感を得ることができます。介護の仕事は、日々の小さな変化や成長に気づきにくい仕事でもあります。だからこそ、自らが意識して、業務を振り返り、日々の成長と小さな成果を可視化するべきなのです。そして、その小さな「気づき」が、成長への意欲と仕事への満足感を生み出します。

自分自身の仕事の満足度を上げることは、自己満足だけで終わることなく、サービスの質の向上など、周囲への良い影響をもたらします。自分の成長を「ジョブカード」を使って可視化することで、内発的動機付けを向上させてみてはいかがでしょうか。

次章では、この3つのキャリア課題を乗り越え、若手福祉職員や初任者が自らのキャリアを主体的に描くための具体的手法として、厚生労働省が推進するジョブカード研修を紹介します。「仕方なく不満げに働く人」ではなく「自ら成長を楽しむプロフェッショナル」の生き方を目指すことで、あなた自身も、あなたが関わる利用者さんも、共に笑顔になれる福祉が実現できるでしょう。

福祉職キャリア設計の6ステップ ~ジョブカード研修で実践するキャリアの振り返り~

福祉現場では、日々の業務に追われ「余裕がなくて、自分の成長を振り返ることができない」「そもそもの自分自身のキャリアの振り返り方がわからない」「目標はあるけど何から始めればいいかわからない」などの声がよく聞かれます。

先ほど指摘した3つのキャリア課題も重要な問題です
 ①キャリアが見えない(キャリア迷子)
 ②作業と仕事の混同
 ③ES(従業員満足度)の低さがCS(顧客満足度)の低下、負のスパイラルを招く

これらの課題は、個人のキャリア満足度の低下を招くだけではなく、サービスの質の低下をもたらしかねません。すなわち組織全体の課題にもつながります。

このような個人のキャリア形成の課題解決のためには、段階を踏んで体系的に取り組むアプローチが効果的です。ここでは、厚生労働省が推奨するキャリアコンサルティングの手法である「在職者のキャリア形成6ステップ」を紹介します。このフレームワークは、自分自身のキャリアを客観的に見つめ直し、計画的に成長していくための実践的なツールです。

在職者のキャリア形成6ステップ5

在職者のキャリア形成6ステップ

ステップ①自己理解:仕事、職務に関して「自分自身」を理解する。
ステップ②仕事理解:現在の仕事内容を理解し、その先の可能性について言及。
ステップ③啓発的経験:可能性を広げられるよう新たな知識を得るための経験
ステップ④キャリア選択に係る意思決定:可能性の選択肢から選択
ステップ⑤方策の実行:選択したものを実行に移す
ステップ⑥仕事への適応:新たな可能性(任務に適応していく)→ステップ1へ。このサイクルはキャリアの節目ごとに繰り返す。節目毎に振り返ることで、より深い自己理解と成長につながります。
ステップ①自己理解:仕事、職務に関して「自分自身」を理解する。ステップ②仕事理解:現在の仕事内容を理解し、その先の可能性について言及。ステップ③啓発的経験:可能性を広げられるよう新たな知識を得るための経験。ステップ④キャリア選択に係る意思決定:可能性の選択肢から選択。ステップ⑤方策の実行:選択したものを実行に移す。ステップ⑥仕事への適応:新たな可能性(任務に適応していく)

これらのステップを実践することで、「キャリア形成や目標達成のために何をすればいいかわからない」という迷いや漠然とした不安が解消され、自分のキャリアを自律的にデザインできるようになります。

この6ステップは1サイクルで完了するものではありません。キャリアの節目ごとに定期的に見直すことで、自身のキャリア観の形成やキャリアプランの策定、成長の実感を得ることができます。特に介護職は、日々変化する利用者さんの状況に対応する必要がある職種ですので、意識的にキャリアの棚卸しを行い、自身のキャリアの方向性を確認するべきでしょう。こうした振り返りの機会を持たないと冒頭で述べた「キャリア迷子」の状態に陥ってしまうかもしれません。

キャリアプランシートの書き方 ~「強み」と「価値観」と「興味」を言語化しよう~

ここからは、ジョブカードの全体像と作成手順について紹介します。ジョブカードは主に以下の3つの様式で構成されています。

ジョブカードの構成

  • 様式1:キャリアプランシート(将来の目標と実現に向けた計画)
  • 様式2:職務経歴シート(これまでの職務経験と獲得したスキル)
  • 様式3:職業能力証明シート(能力評価や資格等の証明)

ジョブカード作成のプロセス

以下の7つのステップで自身のキャリアを振り返ります。

キャリアを振り返る-1

これまでの人生(職業人生)を振り返る。

キャリアを振り返る-2

職務経歴を振り返る。

キャリアを振り返る-3

学習経歴を振り返る。

キャリアを振り返る-4

大事にしたい価値観を確認する。

キャリアを振り返る-5

自分の「強み」と「弱み」を整理する。

キャリアを振り返る-6

周囲からの期待を考える。

キャリアを振り返る-7

プライベートに関することを整理する。

今回のジョブカード研修では「職務経歴シート」「キャリアプランシート」の2種類のシートに取り組みました。時間の都合上、全ての過程を完了することはできませんでしたが、各シートの作成を通じて多くの気づきが得られました。

(1)職務経歴シート

  • 記載内容:前職・現職で得たスキルや知識、経験を記載。
  • ポイント:小さなことでもOK(チームワーク、折衝、気分転換の工夫など)

(2)キャリアプランシート

  • 記載内容:自分の価値観、今後取り組みたいこと、習得したいスキルなどを可視化。
  • ポイント:マイナスと思っていたことも、裏返すと強みになる場合がある。

「3つの円」の重なりから可視化するキャリアのヒント – 「関心・興味×価値観×強み」のフレームワーク

研修では講師がジョブカード作成にあたり、重要なプロセスとして<キャリアを振り返る:④大事にしたい価値観を確認する⑤自分の「強み」と「弱み」を整理する⑥周囲からの期待を考える。>の3つを取り上げました。ジョブカード研修内のワークでは、この項目について自己分析を行うだけではなく、隣の席の参加者とペアになって話し合う時間も設けられました。自分一人では気づかない強みや特性などに気づかされました。

キャリア満足度を高める「3つの円」– 「関心・興味×価値観×強み」この3つの円の重なる部分がキャリアの新たなる可能性のヒントとなるでしょう。

講師の方からは「関心興味×こだわり・価値観×強み・能力」の3円の重なり、この重なりの部分が特に重要であることが説明されました。この3つの要素が交わる部分こそが、自身のキャリアの新たなる可能性のヒントになるのです。単に「やりたいこと」を追求するだけではなく「自分らしく、強みが発揮できる」ものと「会社や社会に貢献できること」を両立できる領域が中長期的にキャリア満足度を高めるのです。

ジョブカードの作成プロセスでは、これまでバラバラだった経験や強みという「点」を「線」としてつなげることで、自分のキャリアの全体像が見えてきます。これにより、将来のキャリアプランも描きやすくなることでしょう。

データが示すジョブカード研修の成果 -26名の福祉職員の声から-

今回のジョブカード研修では、社会福祉法人悠久会の入社10〜20年目の中堅職員や管理職など26名を対象に研修を行いました。研修後のアンケートから、参加者の反応とジョブカードの効果を分析します。

ジョブカードの高い満足と発見の機会

図1.本日のセミナー/研修に参加された感想をお聞かせ下さい

1.本日のセミナー/研修に参加された感想をお聞かせください。
大変満足,27%
満足,65%
やや不満,8%

研修参加者の92%が「満足」以上(うち27%が「大変満足」)と回答しており、ジョブカードを活用したグループワークが高く評価されました。参加者の声からは「自分を普段と違う視点で見ることで少しだけ自分に自信が持てた」「今までの仕事内容について振り返り整理することができた」といった前向きな感想が寄せられています。

また、参加者の77%がジョブカードについて「名前を聞いたことがあるが内容を知らなかった」または「まったく知らなかった」と回答しており、本研修が福祉職におけるジョブカード活用促進の貴重な機会となりました。

図2:以前、ジョブ・カードを作成したことがありますか

図2: 以前、ジョブ・カードを作成したことがありますか
今回初めてジョブ・カードを作成した,92%
以前、ジョブ・カードを作成したことがある,8%

参加者の92%が「今回初めてジョブカードを作成した」と回答しており、福祉現場におけるジョブカードの認知度の低さがうかがえます。これは逆に言えば、今回の研修が多くの職員にとって新しいキャリア支援ツールとの出会いの機会となったことを示しています。

図3.ジョブ・カードについてご存知でしたか

図3: ジョブ・カードについてご存知でしたか

名称も聞いたことがなく、内容も知らなかった,42%
名称は聞いたことがあるが、内容は知らなかった,35%
知っていたが、活用したことはない,15%
知っていて、活用したことがある,8%

さらに詳しく見ると、参加者の42%が「名称も聞いたことがなく、内容も知らなかった」、35%が「名称は聞いたことがあるが、内容は知らなかった」と回答しており、合計77%の参加者がジョブカードの具体的な内容を知らない状態でした。このことから、福祉分野ではまだジョブカードの認知・活用が進んでおらず、今後の普及の余地が大きいことがわかります。

ジョブカードの有益性と具体的効果

図4.ジョブ・カードを作成した感想をお聞かせください

図4: ジョブ・カードを作成した感想をお聞かせください

大変有益,40%
まあまあ有益,48%
あまり有益ではなかった,12%

ジョブカード作成後、参加者の88%が「有益だった」(40%が「大変有益」、48%が「まあまあ有益」)と回答しており、初めて使用したツールながらも高い評価を得ていることがわかります。

図5. ジョブ・カードはどのような点で役に立つと思いましたか(複数回答)

図5: ジョブ・カードはどのような点で役に立つと思いましたか(複数回答)

自身の強み・弱みが明確になる,23名
自身のキャリアの振り返りができる,18名
今後のキャリア・プランを考えるきっかけになる,12名
今後伸ばしたいスキル・能力が明確になる,11名
就職活動における自己PR点を明確にできる,8名
自身のキャリアをより具体的にアピールすることができる,8名
職務経歴、資格・免許等の棚卸しにより自分の考えが整理できる,5名
就業に関する目標・希望を明確化できる,3名
能力開発の必要性を再認識することができる,3名
特にメリットを感じない,0名
その他,0名

具体的にどのような点で役立つと感じたのかについては、「自身の強み・弱みが明確になる」(23名)が最も多く、次いで「自身のキャリアの振り返りができる」(18名)、「今後のキャリア・プランを考えるきっかけになる」(12名)、「今後伸ばしたいスキル・能力が明確になる」(11名)と続きます。

これらの回答から、ジョブカードが持つ「自己理解の促進」と「将来への展望の明確化」という二つの大きな効果が浮かび上がってきます。特に福祉職のように日々の業務に追われがちな職種において、自分自身のキャリアを客観的に振り返る機会を提供する点が高く評価されています。

ジョブカードの継続的活用への意向と今後の展望

図6: ジョブ・カードを今後自身でも更新して活用していきたいと思いますか

図6: ジョブ・カードを今後自身でも更新して活用していきたいと思いますか

強く思う,12%
思う,69%
あまり思わない,15%
全く思わない,4%

研修を通じてジョブカードの価値を実感した参加者の多くが、今後も活用する意向を示しています。「強く思う」(12%)と「思う」(69%)を合わせると、81%の参加者が継続的な活用に前向きな姿勢を示しており、ジョブカードが一過性のワークシートではなく、キャリア形成の長期的なツールとして認識されていることがわかります。

リスキリングへの関心と福祉職の学びに対する姿勢

図7: 今回のセミナーを踏まえ、リスキリング(学び・学び直し)についてお聞かせください

図7: 今回のセミナーを踏まえ、リスキリング(学び・学び直し)についてお聞かせください

リスキリングに関心をもった,15名
リスキリングに関する情報を得ることができた,7名
具体的にやるべきことが分かった,7名
リスキリングの必要性を感じた,6名
リスキリングのための方向性が見えた,4名
リスキリングに関する内容を含まなかった,1名
リスキリングに関し、有益ではなかった,0名
その他,0名

ジョブカード研修は、参加者のリスキリング(学び直し)への関心も高めました。「リスキリングに関心をもった」(15名)、「リスキリングに関する情報を得ることができた」(7名)、「具体的にやるべきことが分かった」(7名)といった回答が得られ、自己理解から学びへの意欲喚起につながっていることがわかります。

参加者の声から見るキャリアへの意識と行動の変化

アンケートの自由回答からは、参加者のキャリア意識と行動に具体的な変化が見られました。

  • 「このままの働き方でいいのかという思いが少なからずあり、強みを活かしてステップアップしてみたい気持ちが出てきた」
  • 「これからのビジョンの設定や今の自分のやりがい、やりたい事の確認ができた」
  • 「自分の強み弱みを書き出すことにより自分のことを理解できた。仕事をする上でやりがいを見つけ出せると思った」
  • 「過去のキャリアにもすべて意味があった、得たものがあったと再認識できた。経験を生かし、今後のキャリアプランを考えたい」
  • 「日頃から褒め合う機会が増えれば、仕事も生活ももっと充実していけると思った」
  • 「普段話す機会がない事まで話せた。時間があれば他の職員のことも知れたら仕事しやすいと思った」

このような声からは、ジョブカードが単なるキャリア支援ツールにとどまらず、職場のコミュニケーション活性化や職員同士の相互理解促進にも寄与していることがうかがえます。

アンケート結果から見えてきたこと

このアンケート集計結果から「社会福祉法人悠久会で働く職員が高い向上心を持ち、積極的にリスキリング(学び直し)に取り組む姿勢を持っていることが確認できました。また、他者への関心が高く、職員同士のコミュニケーション力を大切にしながら仕事の質を高めていきたいという思いを多くのスタッフが共有していることも特筆すべき点だと言えます。

特に「自身の強み・弱みが明確になる」「自身のキャリアの振り返りができる」という点で、80%以上の方が今後もジョブカードを活用したいと回答しており、このツールが福祉職のキャリア支援に有効であると実感しました。

次章では、実際にジョブカード作成支援を受けた職員へのインタビューを通して、より具体的な体験談をお届けします。

ジョブカードの効果とは? 介護職スタッフに聞いた作成の実際とキャリア観の変化

ジョブカード研修終了後、別日程でキャリアコンサルタントによる個別面談及びジョブカード作成支援が希望者向けに行われました。今回の受講生の中から数名が希望し、ジョブカードの完成に向けた支援を受けました。

支援を受けた職員の一人に、後日、ジョブカード作成の体験と感想を聞き、その内容をQ&A形式でまとめてみました。

Q&A:ジョブカード作成研修とキャリアコンサルタントによる作成支援についての質問と回答

回答協力者:介護福祉士・男性(20代)/実務経験5~10年

Q
ジョブカードというツールは、もともと知っていましたか?
A

いいえ、ジョブカードの存在はまったく知りませんでした。今回の研修でジョブカードについて初めて学びました。

Q
ジョブカード作成で、キャリアコンサルタントのサポートはどのように役立ちましたか?
A

キャリアコンサルタントの質問が非常に的確で、自分では気づいていなかった「強み」や「能力」を引き出してくれました。

Q
当たり前にやっていたことが“強み”だと気づいた瞬間はありましたか?
A

はい、ありました。自分では普通だと思っていたことが、他の人から見れば強みなんだと気づかされました。とても大きな発見でした。

Q
ジョブカードは一人でも作成できますか?
A

基本的な項目を埋めることは一人でもできますが、一人で進めていた時は、何を書けばよいか迷う場面が多かったです。キャリアコンサルタントの助言を受けることで、強みや価値観に気づくことができ、完成度がぐっと上がりました。

Q
ジョブカードを作成した経験で活かせそうなことはありますか?
A

キャリアに悩む後輩へのアドバイスや人材育成の場面で、ジョブカードを作成した経験が活かせると思います。

Q
学生や新卒者にもジョブカードは役立つと思いますか?
A

間違いなく役立つと思います。就職活動前にジョブカードを作成しておくことで、自己分析がしっかりできて、より納得のいく職業選択ができるはずです。自分も学生時代にやっておけばよかったなと思いました。

Q
ジョブカード作成後、仕事に対する意識やモチベーションに変化はありましたか?
A

はい、自分の長所や今後、伸ばしていきたい能力が整理できて、日々の業務への取り組みに目的意識が生まれ、仕事へのモチベーションが上がりました。

Q
福祉業界に転職したばかりの方にもジョブカードはおすすめですか?
A

ぜひおすすめしたいです。他業種から転職されてきた方でも、前職での経験やスキルを福祉の現場でどう活かせるか整理できますので、役に立つと思います。

Q
今回、キャリアの節目となる実務経験5~10年目でジョブカード研修を受けた感想を教えてください。
A

このタイミングで研修に参加できてよかったと思います。自分の仕事や価値観を見直すきっかけになりましたし、また、この先の5~10年の福祉キャリアの方向性を考えることができました。

Q
ジョブカードは一度作成して終わりではなく、 定期的に更新した方がよいですか?
A

一度きりで終わらせるのではなく、キャリアの節目ごとに作成することをお勧めします。例えば数年後にまた作成してみると、その時点での自分の成長や価値観の変化に気づくことができます。定期的に見直すことで、キャリアの方向性を確認できる機会になると思います。

ジョブカードは「作成して終わり」ではなく、「成長を支援するツール」 ~継続的にキャリアを見直そう~

今回のインタビューから見えてきたのは、ジョブカードは履歴書のような書類ではなく、自分のキャリアを“可視化”し、継続的にブラッシュアップできる実践的なツールだという点です。介護現場では日々の業務に追われるために、意図的に振り返りの機会を設けなければ「自分自身のキャリア」を見直す時間を確保することが難しくなります。社会福祉法人悠久会では職員のキャリアデザインを支援するため、キャリアの節目や本人の希望に応じてキャリアコンサルタントと連携し、ジョブカード作成支援を積極的に行っていきます。

まとめ ~福祉のプロフェッショナルになるために。まずは「自分のキャリアの見える化」から~

福祉職のキャリア形成には「キャリアが見えない」「作業と仕事の混同」「ESの低下」という3つの課題があると述べてきました。ジョブカードの作成は、キャリア迷子の状況から抜けだし、自分らしい働き方を見つける有効な手段となるでしょう。

ジョブカード研修の意義は、職場の仲間と互いの経験を共有しながら、自分の強みや価値観を再発見できることです。これまでバラバラに点在していた経験や強みを、一本の線としてつなげることで、自分のキャリアが可視化され、次のキャリアの方向性が見えてきます。

現場で忙しく働くうちに、いつしか入職当初の熱意や目標を見失ってしまった人もいるでしょう。ジョブカードは、そうした原点を振り返り、自分の経験を通して、成長した自分の発見するきっかけになるでしょう。長く心の奥底にくすぶっていた思いを再燃させるきっかけとなるやもしれません。

定期的にキャリアを振り返る習慣を持つことで、自己成長につながり、自己満足に終わらない、明確な目標に基づいたサービスの質の向上が実現できまするでしょう。同時に仕事の充実感や達成感高まるものだと思います。

私たち社会福祉法人悠久会は、スタッフ一人ひとりの成長とキャリア形成をサポートしたいと考えています。今後も、キャリアの節目や個人の希望に合わせて、ジョブカード作成の機会を積極的に提供していきます。
「自分らしく働きながら、成長し、社会に貢献したい」
「福祉のプロフェッショナルとして長く活躍したい」

そんな思いを持つ皆さんと共に働ける日を心から楽しみにしています。

自分のキャリアを「点」から「線」へ、そして「面」へと。その第一歩を踏み出すお手伝いをぜひ私たちに。あなたの福祉キャリアを一緒に創り上げていきましょう。

▶ 悠久会の採用情報をチェックする(下記リンクよりご覧ください。)


脚注


  1. ジョブカード制度-厚生労働省-確認日:2025年5月13日 ↩︎
  2. 企業・団体の方へ”従業員のキャリア形成やリスキリングのための取り組みを支援します”-キャリア形成・リスキリング支援センター-確認日:2025年5月13日 ↩︎
  3. 全国各地のキャリア形成・リスキリング支援センター及び相談コーナー(拠点一覧・お問い合わせ先)-キャリア形成・リスキリング支援センター-確認日:2025年5月13日 ↩︎
  4. 令和5年度介護労働実態調査(PDF)-公益財団法人介護労働安定センター-1頁-2024年7月10日(資料公開日) ↩︎
  5. キャリア・コンサルティング技法等に関する調査研究報告書の概要-厚生労働省-2001年5月17日(確認日:2025年5月13日) ↩︎

Sustainable Development Goals

悠久会は、持続可能な開発目標(SDGs)を推進しています。

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この記事を書いた人

永代 秀顕

〔プロフィール〕
社会福祉法人悠久会の理事長。大学で社会福祉を学び卒業時に社会福祉士(certified social worker)を取得。2005年入職、2019年より現職。
悠久会は長崎県の島原半島を中心に福祉事業を行っており、SDGsとまちづくりを含めた社会課題と福祉課題の同時解決に取り組んでいます。

〔保有資格〕
・認定社会福祉士(障がい分野)
〔活動等〕
・SDGsアンバサダー(日本青年会議所公認)として、自法人でSDGsの実践に取り組むと同時に、社会福祉法人が取り組むSDGsの事例等について講演や福祉業界紙への執筆活動等を行っています。
〔所属団体等〕
・(一社)長崎県社会福祉士会 (2016年~2019年 副会長)
・(一社)長崎県知的障がい者福祉協会 理事、九州地区知的障がい者福祉協会 理事
・(一社)島原青年会議所 第64代理事長(2020年 卒会)