SDG目標12「つくる責任つかう責任」とは?
SDG目標12「つくる責任つかう責任」とは、天然資源の持続可能な利用、人の健康や環境への悪影響を最小化する生産や消費のことを指します。従来の大量生産・大量廃棄の経済活動を継続すれば、気候変動や人権侵害などの社会問題が深刻化するとして、危機感が共有され掲げられた目標です。
最近では、エシカル消費という概念も登場し、一人ひとりの購買行動の見直しが促されています。消費者庁によると、エシカル(倫理的・道徳的)消費とは、「地域の活性化や雇用などを含む、人・社会・地域・環境に配慮した消費行動」と定義されています。つまり、つくられる過程のなかで、何も犠牲になっていないモノやサービスを消費しようという考え方です。したがって、生産者、消費者ともに、利便性や効率性だけを求めるのではなく、未来の社会を見据えて社会問題を解決する、あるいは生み出さない生産・消費が求められています。
悠久会がSDGs目標12に取り組む理由
悠久会は、障がい福祉サービスを中心に事業を行っている社会福祉法人であり、モノやサービスを提供して利益を得る民間企業とは異なりますが、SDGs目標12は、企業だけが取り組むものではありません。障がい者支援施設や就労継続支援事業所において、障がいをもつ方の生活・就労支援と同時に「つくる責任」をもって以下のような取り組みを進めています。
悠久会のSDGs目標12の取り組み例
堆肥化によるごみの循環
障がい者支援施設銀の星学園では、給食の調理後に出る生ごみを極力なくすために、業務用生ゴミ処理機(バイオクリーン)を導入しました。1日に15kgの処理機能をもつ機械で、玉ねぎの皮のような繊維質の強いもの以外はほとんど分解され堆肥に変わります。
島原市では、4万人のごみ減量プロジェクトとして、市民一人が一日あたりの燃やせるごみ排出量を850g以下にすることを目標としていますが、家庭だけでなく、より多くのごみを出す事業者が変わらなければ、ごみの量は大きく変わりません。当法人からごみ削減、CO2排出量削減を促進していきたいと考えています。
現在、堆肥は、施設の花壇等で利用したり、地域住民へ配布したりしています。今後は、農園等を通して島原半島内で循環できるサーキュラーエコノミーの仕組みを考え、実現していければと思っています。
地産地消の推進
島原の特産物を活かした商品開発
島原むすびすでは、島原市地域おこし協力隊との協働により、雲仙普賢岳等の噴火による豊かな土壌でつくられた多種多様な島原半島産の食材を活用した「火山弁当」を開発しました。第13回九州駅弁グランプリにおいて優秀賞を受賞しています。
また、山の上のカフェgardenでは、島原百草の郷の島原サフランを使用したクラフトコーラを提供しています。生産地の少ないサフランは島原の隠れた特産品です。そんなサフランとスパイスの香りが感じられる大人のコーラ、ぜひご賞味ください。
Fabと地産地消
Fabとは「デジタルデータをもとに創造物を制作する技術」を指しますが、きらり作業所では、CADデータを利用して木材を削り出し、立体的な造形を行うことができる3Dターニングマシン(CNC木工旋盤)を導入しています。最近の商品例としてはインターンの学生のアイデアを活かした島原市のゆるキャラ「しまばらん」木製スプーンを開発しました。また、神社との由縁のある当法人ならではのプロダクトとして、木製の御朱印帳なども開発し、地域内の神社を周遊し、地域内の観光を活性化させるプロジェクトにも貢献しています。
アイデアをデジタルによって形にするFabは、かつての大量生産・大量廃棄のものづくりとは異なり、持続可能なものづくりの方法の一つです。さらには、Fabはものづくりの地産地消とも言われ、具体的取り組み事例として島原市の材木店から木材を仕入れ、木工商品を製造するというように、地域内で原材料の調達、生産、販売を行っています。
給食における地産地消
昨年度の地産地消コーディネーター派遣事業を機に、障がい者支援施設の給食調理においても食材のサプライチェーンの見直しを図っています。栄養士をはじめとしたメンバーが自ら農家や直売所へ足を運び、新鮮な野菜を仕入れて給食にしています。季節によっては規格外野菜を使用するなど食品ロスにも貢献する取り組みを行っており、地元の農家さんとの密なやりとりをしながら進めています。
現在、年に4回、四季折々で島原半島の食材100%メニュー(地産地消メニュー)の展開を始めています。農業が盛んな島原の土地で、旬の食材を使った季節を感じられる食事、普段とは異なる特別感のある食事を提供することによって、利用者さんの食欲が上がり、食事を楽しんでいる姿がみられています。今後もこの取り組みを通して、地域全体において地域内経済循環を高めながら、利用者さん、職員にとって島原半島での暮らしの実感が得られる、自然と調和した彩りのある豊かな食生活の提供に努めていきます。
持続可能な観光の推進
島原むすびすの火山弁当は、店舗でレギュラー商品として販売するほか、島原鉄道の観光列車カフェトレインでも提供しており人気の品となっています。また、島原市ではロケツーリズムの推進に力を入れており、火山弁当をリッチに仕上げた風光明媚弁当は、映画撮影のロケ弁当としても提供するなど積極的に取り組んでいます。
花ぞのパン工房でも、以前、島原鉄道と島原農業高校の連携による『幸せの黄色い列車王国』オリジナル商品の開発プロジェクトにて「幸せの黄色いメロンパン」の製造に携わらせていただきました。
4月に山の上カフェGardenで開催したアウトドアイベントは、島原半島各地を自転車で周遊するサイクルイベント、イッキ!2023のチェックポイントとしても活用いただきました。薪割り体験をサイクリストのミッションとし、サイクリスト・イベント参加者双方にとって楽しめるコンテンツとなりました。
島原半島の恵みである食材一つとっても、美味しい素材をどのように加工し魅せるかにこだわるなど、様々な団体との協働により、多様な視点で島原半島の価値を再構築し発信することで、地域へのインパクトをより一層高めています。
エシカル消費の促進
冒頭で説明したエシカル消費について、特にエシカルという言葉は使っていませんが、島原むすびすは、自然とエシカル消費を体現するお店だと思います。
島原半島産の食材をメインに、じてんしゃ飯のような地元の加工品業者とも連携して商品を提供しています。地元の人々に地域の加工品業者を知ってもらい、自宅でも試してもらうきっかけになればという想いで始めたメニューです。
また、おむすびの包み紙や弁当の箱は紙製のものに変え、ドリンク提供時にはプラスチックを極力削減したバタフライカップを用いるなど、環境に配慮しながら食事を提供しています。
島原むすびすは、就労継続支援A型と呼ばれる事業所ですが、利用者さん発案のメニューもあり、利用者さんも職員も立場に関係なくアイデアを出し合える、誰もがやりがいを持って働ける職場(ディーセントワークの推進)を目指しています。運営を進めています。地域における一事業者の責任をもって地域や環境に配慮し、社会と共生しながら営む就労支援のあり方で「地域と地域、福祉と地域をむすぶ、人と人をむすぶ」お店を目指し続けています。これからも、飲食店として美味しく楽しい時間を提供することはもちろんのこと、そのようなストーリーにも共感できるお店として地域に溶け込み、人々の暮らしを豊かにする存在でありたいです。
利用者さんが考案した人気のシェイク
悠久会としての「つくる責任つかう責任」
ここに掲載しているのは現在進行中で取り組んでいる一事例ですが、未だ法人内の全てにおいて「つくる責任つかう責任」を果たしているとはいえません。各事業所において、一つひとつの素材や方法、仕組みを、地域全体や環境、未来のことを見据えた選択にシフトさせる働きかけを広げていきたいと思っています。
また、上記の取り組みを通して、生産者の顔が見える等のサプライチェーンの可視化によって安全で安心な食事の提供が可能となるだけでなく、法人としても生産者、地元企業や高校、地域おこし協力隊など、様々な団体との繋がりが構築され始める(パートナーシップの構築)などの社会関係資本の高まりもみられています。今後もその幅を広げながら、様々な人々と一緒に持続可能な島原半島の未来の姿を描き、悠久会としてやるべきことを追求していきます。