SDGsワークショップ ~社会福祉法人がSDGsを推進する意義~

はじめに

 社会福祉法人悠久会では「あらゆる立場のすべての人々の心が通い合う社会の実現」を目指し、「福祉×SDGs×まちづくり」を掲げ、事業を展開しています。
 2015年に、国連サミットで採択され、世界共通で定められた「誰一人取り残さない」持続可能な開発目標「SDGs」。2024年の今、あちこちで耳にするようになり、当法人でもSDGsの認知は高まっている一方で、その目的がどこまで浸透しているか、事業にどう落とし込むかという点では未だ課題が尽きません。
 今回は、「持続可能な社会を目指すことがなぜ必要なのか?」を体感できる「Get The Point」というSDGs学習ゲームを活用し、役職者・希望者を対象にSDGsの勉強会としてワークショップ形式の研修を行いました。

SDGsゲーム「Get The Point」

 「Get The Point」は、その名の通りポイント数を競うシンプルなゲーム。1グループ4人で構成されます。

①競争の社会:他のプレイヤーよりも多くポイントを稼いだ者が優勝
②協力の社会:参加プレイヤーの合計ポイントが一番高得点だったグループが優勝

という2つの社会を経験することで、「持続可能な社会とはどういうことか」「なぜ持続可能な社会を作る必要があるのか」「持続可能な社会を作っていくために必要な姿勢やマインド」について、小学生から大人まで理解を深められるゲームです。

 これらは、奪い合い競争する世界と持続可能な社会を目指して協力する世界を暗示しており、抽象化された社会を疑似体験することで、社会との向き合い方、進むべき方向性がわかってくるような、そんな体験ができます。
 使用できる資源は、鉄・レアメタル・化石燃料・木材・動物・植物の6種類。それらを用いて、生活に関連した10個のアイテム(車や家、携帯電話に食べ物など)を得ることができます。資源には、再生できるもの・できないものがあり、1周するごとに、再生可能な資源は回復するというルールです。

参考:【公式】子どもと大人のSDGs学習ゲーム Get The Point

SDGsゲーム いざ実践!

 今回は、サスティナブルアカデミーの代表であり、SDGsアンバサダーとしてSDGsの普及啓発に取り組んでいる嶋田亮氏に、ファシリテーターとしてゲームを運営していただきました。

 今回は、①競争社会②協力の社会、それぞれ10回ずつゲームを行い、ゲームが終わった時に11ゲーム目までゲームが成立する(資源が残っている)状態で終わる、という条件が課されました。そのうえで、ポイントの高いチームが優勝!とのこと。10回のなかでは、ランダムに「サスティナブルカード」「クライシスカード」が登場し、予測不可能な展開となっていきます。

クライシスカード
サスティナブルカード

 高ポイントのアイテムは、再生不可能な資源を沢山使うものが多いため、ポイント数を意識しつつ、資源を残すためには何を選べば良いのか葛藤しながら楽しくゲームを進めていきました。

SDGsゲームで気づく、本当の豊かさ

豊かさの指標を変えれば未来も変わる

 さて、2回のゲームが終了し、各グループの点数を聞いていくと以下のような結果に。

 1ゲーム目と2ゲーム目で一番変わったのは「目標」です。個人がそれぞれに豊かになることを目標とした1ゲーム目の終わりには、どのグループも資源が枯渇している状態でしたが、みんなで豊かになる、未来につなげることを目標とした2ゲーム目の終わりには少しずつ資源が残り、社会が存続できる状態となりました。
 さらに、1ゲーム目の個人の点数の合計と、2ゲーム目の各チームの点数を比較してみると、2ゲーム目の方が、点数が高いという結果に。持続可能な社会を目指して判断・行動することは、結果として全体の経済的豊かさにも繋がっているということかもしれませんね。
 このように、目標が変わったことで、地球の持続、資源の循環や再生について考えるようになり、疑似的に持続可能で豊かな社会がつくられました。つまり、目標が変われば、行動が変わり、未来も変わるということです。

 ただし、2ゲーム目終了時点のボードを見てみると、再生不可能な資源は使い切っており11週目までゲームは続行できるが、それ以降の未来の暮らしは危うい(1回目が2024年、10回目が2034年とすると、2035年までは暮らせてもそれ以降の未来は十分に暮らせない)というチームが多く見受けられました。目先のことだけでなく、より長期的な視点が必要だと気づかされますね…。

鉄、レアメタル、化石燃料がひとつも残っていないグループ 
それらを未来のために残したグループ

 また、2ゲーム目に、みんなで協力して社会全体の豊かさを考えたとはいえ、メンバー内では取得ポイント(アイテム)に偏りがあり、格差が見られました。このゲームにおいては、ゲームの順番がポイント数に影響していましたが、富があり様々な選択肢をもっている人が財を得る、という不平等な現実社会を描いているようでした。悠久会が目指す「あらゆる立場のすべての人々の心が通い合う社会」とは裏腹な結果です…。誰もが幸せを感じられるような社会を築いていきたいですね。

暮らしのなかでできること

 これらの気づきを踏まえ、具体的に私たちは現実世界でどのような選択をするべきなのでしょうか?暮らしのなかで資源の使い方など見直すべきポイントはないでしょうか?実は、ゲーム内で出てきた「サスティナブルカード」にヒントがありました。

  • 自然エネルギーやバイオマスなど、植物1枚を化石燃料1枚に変換できるカード
  • レアメタルをリサイクルして、1枚復元できるカード

 これらのサスティナブルカードの選択のように、できる限り再生可能な資源を使用したエネルギーを選ぶこと、また自分の手でリサイクルすることなどによって、資源の循環や、CO2排出量削減をもたらすことができそうです。

 また、近年は100%リサイクルボトルやミドリムシガソリンなど、精神的・金銭的な我慢を強いることなくサスティナブルな選択を可能にする技術の発展もかなり進んでいます。消費者である私たちが地球の現状を知り、アンテナを張って行動を変えることが重要です。

悠久会がやるべきこと

 消費者の一人として何ができるかを考えたうえで、ワークショップの終わりには、悠久会が掲げている福祉とSDGsとまちづくりを統合したビジョン「YDGs」を改めて振り返り、悠久会としてやるべきことは何かを改めて考える時間となりました。日頃の暮らしを見直すことはもちろんのこと、長崎県島原市にある社会福祉法人として持続可能性を追求することは地域社会にとって必要不可欠です。

 このSDGsゲームを通して「なぜ持続可能な社会を作る必要があるのか?」を理解できたことで、悠久会が目指す方向性や今取り組んでいることの意味が実感として湧いてきたのではないでしょうか。

 例えば、日頃から行っている猛島海岸での清掃活動は、利用者さんの歩行訓練としてだけでなく、海の豊かさを守るための一つの手段として、今後も継続する意義を実感できたのではないでしょうか。(SDGs目標14「海の豊かさを守ろう」)

 また、資源の循環やCO2排出量削減に関しては、太陽光パネルの設置や施設調理場での生ごみ処理機の活用も持続可能な選択の一つといえるでしょう。(SDGs目標7「エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」・12「つくる責任つかう責任」・13「気候変動に具体的な対策を」)

 その他、地域経済の循環・持続という視点では、島原むすびすや施設の給食における地産地消の推進が挙げられます。(SDGs目標8「働きがいも経済成長も」・11「住み続けられるまちづくりを」・12「つくる責任つかう責任」)
※上の記事にて、地産地消の推進についても触れていますので、そちらもぜひ読んでみてください。

 ただし、SDGsや持続可能なまちづくりに対して意識や取り組みは事業所や人によってもバラバラですし、未だ取り組めていない地域課題(社会課題)の分野も多くあります。制度の狭間にいる困り事を抱えた方を支える仕組みの構築や、誰もが参画できる文化芸術やスポーツを楽しめる場の創造など、悠久会だからこそ解決すべき課題もたくさんあります。法人のもつ資源を最大限活用し、法人外の様々な団体と協働して知恵をお互いに共有しながら、持続可能な地域づくりに取り組んでいきたいと思います。

おわりに ~社会福祉法人悠久会とSDGs~

 今回は、SDGsゲーム「Get The Point」を活用して行ったSDGsの研修(ワークショップ)についてレポートしました。SDGsのゲームには様々な種類がありますが、「Get The Point」は、SDGsの理解度に関係なく誰でも取り組みやすいほか、「なぜ持続可能な社会を作る必要があるのか?」という本質が自然と体感できるゲームだと感じました。SDGsは、持続可能な社会の実現に向けた2030年までの目標、共通言語に過ぎませんが、SDGsが目的化してしまうケースも多々見られます。そうならないためにも、なぜ取り組むのか(目的)を改めて認識し、資源を残すなど未来世代の豊かさを想像する長期的視点をもって、社会的意義のある取り組みを考えていきたいです。

 また、ワークショップのなかで講師から「地元の学生等に”どんなSDGsの取り組みをしていますか?”と聞かれたときに、きちんと答えられますか?」という問いが投げかけられ、すでに行っている取り組みを言語化できることも大事だと感じました。現在法人内で進めているエンゲージメント向上の取り組みも通して、職員自身が法人が目指す地域福祉のあり方やSDGsの取り組みについて語ることができる組織になれたらと思っています。今回の研修での学びを、管理者や中間管理職から各事業所内でも共有し、未来志向でSDGsとまちづくりを推進できる人材の育成に繋げていきたいと思います。

Sustainable Development Goals

悠久会は、持続可能な開発目標(SDGs)を推進しています。

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この記事を書いた人

悠久会 広報の人

長崎県の島原半島で福祉事業を展開している社会福祉法人です。SDGsの推進及び「福祉×まちづくり」をビジョンに掲げ、福祉課題と社会課題の同時解決を目指しています。
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「全ての人々の心通いあう社会の実現」「ウェルビーイングの向上」を目指します。