株式会社LANYによるプロボノ支援事例にご紹介いただきました
私たち社会福祉法人悠久会は「福祉の魅力を世に伝えるための情報発信」を積極的に行っています。ご縁がありまして、デジタルマーケティング支援会社の株式会社LANY(代表 竹内渓太氏)によるプロボノ支援を受ける機会に恵まれました。また、2024年7月にはLANYの代表である竹内渓太氏とCOOの市川昌俊氏が悠久会に訪問し、事業所の視察と意見交換を行いました。
下記のリンクから、株式会社LANYのプロボノ支援の紹介記事をご覧いただけます。LANY代表の竹内氏による非営利団体や社会的意義がある活動への支援に対する熱意が伝わる素晴らしい記事となっています。本記事とあわせてお読みいただくことで、私たちの取り組みをより深くご理解いただけると思います。
本記事では、このパートナーシップがもたらす「福祉×デジタルマーケティング」の可能性、プロボノ活動の実際、視察訪問についてご報告します。
デジタルマーケティングの株式会社LANYとは
株式会社LANYは「価値あるモノを、インデックスさせる。」というミッションのもと、企業のデジタルマーケティングを幅広くサポートしています。専門領域はSEO対策、コンテンツマーケティング、広告運用などの多岐にわたり支援を行っている会社です。
そんな中、思いがけない形でLANY代表の竹内氏から連絡をいただき、福祉分野におけるデジタルマーケティング活用支援に強い関心を持っており、プロボノ活動として私たちの支援に取り組みたいとの申し出がありました。
プロボノとは?
非営利用語辞典
社会人がその職業による専門性に基づく知識や経験などを生かして行うボランティアを指す。また、それを行う社会人をいう。プロボノ(pro bono)の語はラテン語の(pro bonopublico)の略で、その意味は、「公衆の善のために(for the public good)」である。
株式会社LANYと社会福祉法人悠久会のパートナーシップ ~デジタルマーケティングのプロボノ活動支援~
福祉業界が情報発信を必要とする背景と課題
福祉業界は、「キツい」とか「待遇面での課題」といったネガティブなイメージが世間一般にはあるのではないでしょうか?しかし、実際の福祉現場は、ネガティブなものばかりではありません。利用者さんとの何気ない会話やふれ合いから生まれる心温まるエピソード。特に障がい福祉分野は、利用者さんの人生を伴走する支援、長期にわたって寄り添うことができるというやりがい。その社会的意義として人々の地域生活を支える社会のインフラであること、ソーシャルグッドな社会の実現に貢献できるというポジティブな面もあります。
近年、福祉業界は処遇改善加算の導入により給与面の待遇改善が行われています。職場環境の状態を示すデータ、「令和5年上半期雇用動向調査結果の概要ー産業別の入職と離職の状況(PDF)ー」からも医療・福祉分野の離職率は全産業平均の8.7%と他業界と比較しても特別に悪いという状況ではありません。
一方で、福祉業界に対する世間のイメージは、時にマスメディアなどの影響で偏ったものになりがちです。その理由として、虐待事件や業界の不祥事などのネガティブなニュースは積極的に報道される傾向があること。さらに、このようなニュースを視聴した人々がSNS上で情報を拡散することでネガティブな印象が増幅してしまいます。一方で、福祉現場でのポジティブな話題、例えば利用者さんとの心温まるエピソードなどの福祉のやりがいに関係する話は、メディアで取り上げられることが比較的少ないのではないでしょうか?
しかし、今日では個人や福祉事業所がSNSやウェブサイトなどのデジタルツールを活用して自分の発信媒体を持つことが可能です。福祉現場の魅力的な情報を直接、安価に発信できる時代となりました。福祉従事者自身が福祉の魅力を自分自身の言葉で伝えることで、ネガティブに伝えられがちな福祉の話題を、ポジティブな目線で伝えることができるのです。
福祉を専攻した学生でさえも、大学卒業後に他業種へ就職する傾向が強まっています。この状況を変えるために、私たちは福祉の魅力や社会的意義をポジティブに発信し、福祉のイメージアップと福祉業界の活性化を目指しています。SNSやデジタルメディアを最大限活用し、福祉の現場から心温まるエピソードや感動的なストーリーを皆さまとシェアしたいと考えています。私たちは福祉の仕事の満足感とやりがい、そして福祉がSDGsの掲げる理念「誰一人取り残さない社会」の実現にどのように貢献しているかを、多くの方々に知っていただきたいと思っています。
福祉の魅力や社会的意義を伝えることは、誰もが安心して暮らせる持続可能な福祉社会を目指すための福祉人材の確保、及び福祉の社会的意義を世間に伝えることで、障がいを持たれた方への差別や偏見の解消につながり、社会福祉法人悠久会が目指す「全ての人々の心が通い合う 心豊かな社会の実現」に結びつくものだと確信しています。
福祉業界の情報発信 ~アナログ中心の情報発信からデジタル移行期へ~
福祉業界では少し馴染みの薄い「デジタルマーケティング」という言葉。本記事の話を進める前に、まずはデジタルマーケティングについて少し説明したいと思います。その前に福祉業界の情報発信について触れてみたいと思います。
福祉業界の情報発信 ~陰徳善事~
昔々の福祉業界では情報発信の機会も少なく、積極性も乏しいものでした。
私が思うに日本人特有の思想として「陰徳善事」の影響もあったのかと思います。
“陰徳善事”
四字熟語より
見返りを期待せず、人に知られないように密かに善行を施すこと。近江商人の経営理念として知られています。
福祉業界では良い行いをしても、積極的にPRすることをしない傾向にあります。情報発信に力を入れている事業所は少なく、広報専任職員を配置するところもまれで、現場職員が広報係を兼任しているのではないでしょうか?(一部の大規模法人や本部機能が充実している法人では、広報職員を専任で配置していることもあります。)
しかし、本記事のテーマである「パートナーシップ」を実現するためには積極的に情報発信を行い、社会課題を協働で解決する協力者を募る時代へと変わりつつあると感じます。
福祉業界の情報発信 ~アナログ主体の情報発信~
福祉業界では、情報発信はアナログ主体で行われてきました。デジタルの対極の言葉は「アナログ」という言葉であるように、パンフレットやチラシなどのアナログな手法を主体として発信が行われてきました。下記に代表的なアナログの広報媒体について記載します。
- 紙媒体の配布広報物
事業所パンフレット、法人の定期刊行物(社外広報誌)、A4チラシなど - アナログメディア
新聞広告・新聞折り込み、看板広告、雑誌(タウン誌)広告など
昔ながらの手法とはいえ、地方ではアナログな広報戦略が未だ効果的です。地元の地方紙に掲載されたり、ケーブルテレビに出演すると「この前、新聞に載っていたよね」と声をかけられることも多く、情報を届けたい対象者の利用頻度が高いメディアを選定して広報を行えば十分に効果を発揮します。
地域(=特に高齢化が進んでいるエリア)ではXやTikTokなどのSNSのユーザー数もまだまだ少ないです。このようなエリアでは費用対効果を考えると、デジタル広告よりも、新聞折り込みや地域のイベント出店でのパンフレットを手渡しといったアナログ的手法の方が効果的であるケースも十分想定できます。
福祉業界もデジタルマーケティングに取り組むべき理由
1.スマートフォンの利用率の上昇によるデジタルマーケティングの有効性の向上
福祉業界がデジタルマーケティングにも取り組むべき理由の一つに「スマートフォンの普及率の向上」をあげることができます。
総務省の「令和5年通信利用動向調査の結果(PDF)」によると、世帯におけるスマートフォンの所有割合は90.6%に達しており、若年世代のSNSの利用が90%程度と高いのは当然に、高齢世代でも70-79歳が66.6%、80歳以上でも52.6%と半数以上がSNSを利用していると調査結果が示しています。特に1990年代以降に生まれた人々はデジタルネイティブと呼ばれ、物心ついた時からデジタルツールに慣れ親しんでいる世代なのです。
広報戦略としてアナログ媒体も効果的ですが、時代が進むにつれデジタル媒体での情報発信の方が費用対効果の面でも優れていくことは予測がつくと思います。
2.ソーシャルメディア視聴時間の上昇とデジタルマーケティングの有効性の向上
スマートフォンの利用率向上に比例し、インターネットやソーシャルメディアの視聴時間も増加しています。総務省の「令和5年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書-概要(PDF)」では
①「テレビ」、「インターネット」、「新聞」及び「ラジオ」の利用時間と行為者率:令和5年(2023年)
全世代の平日の傾向としては、テレビ(リアルタイム)行為者率は71.1%、ネット行為者率は91.2%とネット視聴者の方が多い状況です。
②インターネットの利用項目別の利用時間と行為者率:令和5年(2023年)
全世代で平日・休日ともに「動画投稿・共有サービスを見る」が最も長く(平日は54分、休日は79.6分)特に若い世代(10代・20代)は「動画投稿・共有サービスを見る」の平均利用時間が長い傾向にあり100分を超える傾向にあります。
上記の調査結果からも若い世代は当然ですが、上の世代においてもソーシャルメディアや動画投稿・共有サービスを活用したデジタルマーケティング手法が有効になりつつあると言えるでしょう。
3.デジタルマーケティングの目的と効果
福祉業界の現在の大きな課題は「人材不足」です。一般企業では売上が確保できても、人材不足のために倒産するケースもあります。「福祉業界が情報発信を必要とする背景と課題」で述べたように人材確保や若い世代への福祉のイメージアップを行うために今後、デジタルマーケティングを活用することは必要不可欠となるでしょう。
特に福祉事業は公益性が高い事業ですので、様々なステークホルダーに向けて情報発信する必要性があり、従来のアナログ手法に加え、デジタルマーケティングを活用することで、より多くの人や関係機関などに情報をお届けすることができることでしょう。
株式会社LANYとの出会いとプロボノ活動の始まり
福祉業界においてもデジタルマーケティングに取り組む必要があると認識しつつも、我々は福祉分野の専門家ではありますが、デジタルマーケティング分野については専門的知見を持っていませんでした。しかし、専門家へアウトソーシングするにしても、最低限の知識を持っていないと、デジタルマーケティング業務の何から依頼をするべきかもわかりません。そこで、デジタルマーケティング分野に関する情報収集から始めました。その過程で株式会社LANYの存在を知りました。
LANYは、「SEOおたく」というアカウント名でXやYouTubeを通じてデジタルマーケティングの情報を積極的に発信していました。私自身、福祉の魅力を効果的に伝えるためにはSEO(検索エンジン最適化)やSNS運用などが必須であると考えており、情報収集の過程で、彼らのYoutubeチャンネルやXアカウントを知りフォローをしていました。LANYが提供するSEOに関する動画コンテンツやホワイトペーパーは、デジタルマーケティングの素人である私でさえも理解しやすくまとめられており、学習に役立ちました。
そして、記事の冒頭で申し上げましたとおり、株式会社LANY代表の竹内氏より福祉分野へのプロボノ支援を行いたいとの申し出があり、二つ返事でお願いすることにしました。
デジタルマーケティングとは? ~マーケティングの歴史も踏まえながら定義を紐解く~
デジタルマーケティングの必要性についてはこれまでお話してきましたが、そもそも「デジタルマーケティングとは何か?」説明が不十分のまま話を進めてはいけませんので、この章にて少し概要について触れたいと思います。
マーケティングとは?
デジタルマーケティングを理解するために、まずは「マーケティング」について理解を深めたいと思います。マーケティングは19世紀頃には誕生し、初期のマーケティングは製品志向(製品中心)の考え方でした。大量生産した商品をどうすれば消費者に大量に販売できるのか?という観点から生まれた概念です。その代表的な手法が「4つのP」です。
伝統的なマーケティング「4つのP」
- Product(製品)
- Price(価格)
- Promotion(プロモーション)
- Place(流通)
マーケティングを一言で表現する言葉としてピーター・ドラッカーの次の言葉があります。
マーケティングの目的は、販売を不必要にすることだ。
ピーター・ドラッカー
無理な訪問販売やアポ電、多数の営業担当者の配置や多額の広告宣伝費を使わなくても、自然と商品が売れる状態が理想的です。確かに販売促進費などに経費を削減できたならば、商品やサービスの品質向上のために多くの予算を注ぎ込むことができ、それは消費者にとってもメリットがあります。
フィリップ・コトラーはマーケティングについて次のように定義付けを行いました。
マーケティングの目的は、顧客のニーズに応えて利益を上げることである。
フィリップ・コトラー
さらにコトラーは時代によるマーケティングの変遷を「マーケティング1.0」から「マーケティング5.0」まで定義しています。
コトラーによるマーケティングの定義
- マーケティング1.0:製品主義
- マーケティング2.0:顧客志向
- マーケティング3.0:価値主導
- マーケティング4.0:自己実現
- マーケティング5.0:人間中心
マーケティング1.0(製品中心)から、マーケティング2.0及び3.0において、顧客や社会貢献(CSRやSDGs的観点)を重視する流れが生まれました。さらに、マーケティング4.0では、なりたい自分を志向した「自己実現(精神的欲求を満たす)」を重視するようになり、デジタル社会におけるカスタマージャーニーとして「5A理論」が提唱されるようになりました。
5A理論
①認知(AWARE)②訴求(APPEAL)③調査(ASK)④行動(ACT)⑤推奨(ADVOCATE)
最新の定義「マーケティング5.0(人間中心)」のアプローチ手法では、カスタマージャーニーの全工程において最先端のテクノロジーを活用《AI(人工知能)、NLP(自然言語処理)、センサー、ロボティクス、ARとVR(拡張現実と仮想現実)、IoT、ブロックチェーン》を行い、顧客体験の強化を目的としています。
マーケティング5.0の構成
データに基づき、①データドリブンマーケティングを行います。そして、②予測マーケティング、③コンテクスチュアルマーケティング、④拡張マーケティングを活用します。このマーケティングを推進する組織体制は⑤アジャイルマーケティング(アジャイルな組織体制-部署横断・分散型組織)によって行われます。
マーケティング5.0の構成としては①⑤が2つの規律、②③④が3つのアプリケーションという構成になっています。
マーケティングの変遷をたどると、時代の流れとともにマーケティング手法は絶えず進化しており、マーケティング5.0では、AI(人工知能)の活用といった最先端のデジタル技術を活用したマーケティングが導入されています。
デジタルマーケティングとは?
デジタルマーケティングは、旧来のアナログ中心のマーケティング(店頭での販促活動、カタログ、チラシ)や営業担当者による直接的な営業活動及びマスメディアを使った1対多のマス・コミュニケーションなどの手法から、デジタルツールをマーケティングの中心にし、1対1の双方向コミュニケーションや消費者のデータをリアルタイムで収集しオーダーメイド、AIを活用したレコメンドなどデジタルの特性を活かしたマーケティング手法です。
マーケティング1.0からの流れを振り返りますと、マーケティング3.0ではインターネットが、マーケティング4.0ではSNSが手法に組み込まれるなど、時代が進むごとにデジタルマーケティングの活用がますます重要になっています。
デジタルマーケティングは体系化や定義が難しいという特徴を持っています。その理由は、デジタル技術の進化スピードが非常に早いことがあげられます。デジタルマーケティングの重要性は年々増していますが、アナログマーケティングの手法を完全に駆逐するわけではありません。
全てのマーケティングのプロセスがデジタルだけで完結するのではなく、アナログを含む、伝統的なマーケティング手法と共存共栄しながら進歩するというイメージが正しいのではないでしょうか。
株式会社LANYによるデジタルマーケティングのプロボノ支援
福祉業界とデジタルマーケティングなど異業種とのパートナーシップで重要なのは、共通の理念を持ち、進むべき方向を同じくすることです。福祉業界と協働で取り組む、株式会社LANYのプロボノ活動に対する考え方が概念図としてわかりやすく図式化されていましたので、紹介いたします。
~LANYのプロボノ活動に対する考え~
「全ての人々の心が通い合う 心豊かな社会の実現」に向けたデジタルマーケティングエージェンシーLANYのプロボノ活動事例の記事より引用
上記の概念図から、LANYが目指す「デジタルマーケティングの力で強くて優しい社会を作る」というVISIONと、社会福祉法人悠久会が目指す「あらゆる立場のすべての人々の心通い合う社会」の実現。さらに、SDGsが掲げる「誰一人取り残さない」世界の実現という理念には多くの共通点があります。このように、共感できる理念やビジョンがあると、パートナーシップを組みやすく相乗効果を発揮しやすいのではないかと思います。
LANYのデジタルマーケティング支援
それでは実際の株式会社LANYのプロボノ支援活動を紹介していきたいと思います。まずは、デジタルマーケティング分野における総合的な助言や壁打ちです。
先ほど、デジタルマーケティングの説明で触れたとおりデジタル技術の進歩は早いので、最新の情報を入手し、かつ素早くPDCAサイクルを回しながら実践するくらいの取り組みを行わないとデジタルマーケティング分野で通用するレベルの知見を得ることはできません。
我々は福祉が本業ですので、デジタルの進歩に対応できるデジタルマーケティング部署や専任職員を積極的に配置・育成を行う体制を作ることは難しいです。
LANYは最新のデジタルマーケティングに関する知見を有していますので、助言を得ることでピントがずれた施策の実行を防ぐことができます。特にSEO分野では、定期的に行われるGoogleのコアアップデートへの対応も考えなければなりませんのでLANYの存在は心強さを感じています。
1.社会福祉の魅力を世の中に発すること
「良いコンテンツをどのように伝えるか?」
この課題への対応が情報発信を行ううえで重要です。
福祉は「共生社会の実現」を目指す、社会的意義のある仕事(良いコンテンツ)であることは揺るぎのないものです。
しかし、どんなに良いコンテンツを持っていても「発信しなければ伝わらない」「発信の方法が悪ければ届かない」のです。
社会福祉法人悠久会では「花ぞのパン工房」でパンを作っています。そこで、イメージしやすくするために「山奥にあるパン屋」を例え話の題材にして、情報発信の課題について考察してみたいと思います。(※実際の花ぞのパン工房の店舗は市街地にあります)
課題:良いコンテンツがあるが届いていない(知られていないパン屋さん)
腕利きのパン職人さんが美味しいパン(良いコンテンツ)を作っています。
しかし、お店が人里離れた山奥にあり、街の人々に認知されていない、お店までの道がわかりにくく、お客さんが辿りつけない状況では、せっかくの美味しいパンも宝の持ち腐れになってしまいます。(売れ残ってパンを廃棄したり、赤字でパン屋が閉店する可能性があります。)
上記課題では、良いコンテンツがあるのに知られておらず、誰にも届いていない状態になっています。
その課題を解決するにはどのような方法があるでしょうか?
解決策:
お店の場所をわかりやすくする看板や案内の工夫、店の地図を入れたチラシの配布、入りやすい雰囲気のお店づくりなど。
上記の解決策のように認知度を向上させる工夫を行うことで、店の認知度が高まり、美味しいパンを作っているのであれば売上が向上することでしょう。
これをSEOで例えるなら、Googleにインデックスされやすいサイト構成にするということです。(お客さんに発見されやすい状態)
アナログ的な表現ですが、タウンページに業種別で掲載されている状態、パン屋と一目でわかる店名で表示されている。インターネット的な表現を用いるとGoogleマップに適切に登録されている状態(MEO:マップ検索エンジン最適化)です。
※ちなみに、Googleインデックス登録がされていないとGoogle検索しても検索画面に表示されません。
「Googleインデックス登録」についてはプロボノ支援をいただいています、株式会社LANYの下記記事に詳細がございますので、興味のあります方はご覧ください。
Googleインデックス登録されていないという状態はGoogleから「サイトが存在していない」と判断されているということです。パン屋で例えるならば「お店が人々から認知されていない」状態です。そもそもお店が認知されてすらいないと、パンを買いたい時に、そのお店を訪問するという選択肢が生まれません。(国道沿いや駅前など好立地にお店があれば偶然にも発見されるでしょうけれども・・)
山奥にひっそり存在するパン屋さん(飲食店)でも、パン(食事)が美味しければお客さんで大賑わいということもあります。たとえば雑誌に掲載されたり、メディアで紹介されている有名な店舗などです。つまりは、売上を上げるための大前提として、お店が認知されていなければならないのです。
逆に、街中という好立地に店舗をかまえ、広告をたくさん出して認知されやすいパン屋でも、そもそもパンが美味しくなく店舗がダサい(良質ではないコンテンツ)場合は、最初に一見さんなどでお店が賑わってても、悪い評判が伝わり、最終的には「お店に閑古鳥が鳴く」ことになりますので、良いコンテンツを継続して作り続けることがデジタルマーケティングで成功するための前提条件であることは言うまでもありません。
前置きが長くなりましたが、美味しいパン(良いコンテンツ)を知ってもらう(伝える、見つけてもらう、良い評判)のための工夫が情報発信やデジタルマーケティングの役割だと思います。
実際にLANYからは、Webサイト充実の支援(記事リライトのポイント)や有効なプレスリリースの発信手法についてご助言いただきました。
2.社会福祉法人悠久会で働く仲間を増やすこと
現在、LANYのプロボノ支援のメインプロジェクトが「働く仲間を増やすこと」すなわち「採用活動支援プロジェクト」です。
社会福祉法人悠久会だけではなく、福祉業界全体が人手不足に悩んでいます。この課題をLANYの竹内さんと話している中で「福祉の仕事の魅力」を正しく伝えようというテーマでプロジェクトを進めていくことにしました。
・福祉を知るためのコンテンツの充実
具体的な企画としては、福祉学部の学生及び福祉初学者向けに「福祉を知る・学ぶ」コンテンツの充実です。
そのコンテンツの一つとして「福祉とは何か? ~1人ひとりのウェルビーイングと地域共生社会の実現を目指して~」の記事が生まれました。この記事は想定した読者のニーズにマッチしたのかWebサイトの流入が増えるなどの良い結果を得ることができました。引き続き、気軽に福祉を知ることができるコンテンツに制作に取り組んでまいります。また、ネガティブなイメージが先行する福祉ですが、実際の現場では利用者さん達との心温まるエピソードも多く、その魅力を伝えることで福祉業界に就職を希望する人を増やすことができるのではないかと考えています。
・障がい福祉事業はアナログからデジタルまで多様な事業を行っています。
福祉のイメージとして「介護」のイメージを強く持たれている方も多いかと思いますが、障がい福祉事業では「就労支援」のサービスもあります。悠久会の就労支援事業では、おむすびカフェやパン屋などの飲食事業を行ったり、島原市のゴミ袋作り、デジタルとものづくりが融合したFab事業など幅広い事業を行っています。介護に適性がなくても就労支援事業で適性を発揮する方もいますので、障がい福祉分野は、実に幅広い仕事を取り組んでいるし、新しい事業にも取り組める可能性があるということを知ってもらえればと思います。
社会福祉法人悠久会では、採用活動において「採用のミスマッチをなくす」ことを重視しています。ミスマッチが起こってしまうと、早期離職につながったり、低いモチベーションのまま仕事を続けてしまうことになりかねません。採用ミスマッチを防ぐために、積極的に情報を発信することで、求職者が福祉の仕事の適性や、悠久会の方針にフィットするかイメージできることが期待できます。我々が目指すべき採用スタイルは「理念共感型採用」であり、福祉と悠久会の姿を多く伝えることで双方が幸せになる採用を実現したいと思います。
「介護職・福祉職のキャリアについて」の記事でも執筆したとおり、理念に共感できていないと「Will(やりたいこと)・Can(できること)・Must(やるべきこと)」のうち、求職者の「やりたいこと」と悠久会が目指す「やるべきこと」が一致せず、双方が不幸な状態に陥ります。私たちの社会福祉法人悠久会の理念に共感する方には、やりがいと成長をお約束いたします。そのような方はぜひ採用のお申し込みをお願いいたします。
異業種の方と話すことで、我々が魅力と感じていなかったもの(当たり前だと思っていること)が大きな魅力であると気づかされることがあります。LANYの竹内氏とのミーティングの中でも、「それ素晴らしいですね」などのコメントを頂くなど、我々が気づいていない魅力を発見していただいたり、その魅力をデジタルマーケティングを活用してどのように発信すればよいかなどの具体的な助言をいただいています。
最新の採用手法なども情報共有していただけるので非常に参考になります。
SNSの活用ではnoteを採用広報として活用することもご助言いただきましたので、私自身もnoteのアカウントを作成し定期的にnoteの記事を執筆しています。
今後の取り組みとして悠久会の職員に、福祉の仕事のやりがいを語ってもらう「職員インタビュー記事」や採用ページの充実などに取り組んでいく予定です。
株式会社LANYによる社会福祉法人悠久会への訪問
2024年7月プロボノ支援記事のインタビューを兼ねてLANYの代表である竹内渓太氏とCOOの市川昌俊氏が社会福祉法人悠久会の各事業所の見学に来ていただきました。
まずは、山の上カフェGarden(Instagram)にて食事をともに楽しみながらインタビュー及びプロボノ支援プロジェクトの打ち合わせや意見交換を行いました。
続いては、就労継続支援B型事業所の花ぞのパン工房へ視察に。実際に利用者さん達がパン作りの様子を見学し、サービス管理責任者より就労支援の取り組みについて説明をいたしました。様々なバックグラウンドを持った利用者さん達がいて1人1人としっかり人間関係を構築しつつ、就労支援の業務は単にパンを作る技術を教えるだけではなく、職場での良好な人間関係の作り方や適切なコミュニケーションを確立する支援も行っていることを説明していました。
おむすびカフェ「島原むすびす」では、地産地消の取り組みとして、島原半島の食材を使用したおむすび作りや、地域活性化のために地域おこし協力隊とのパートナーシップで開発した「火山弁当」の説明や観光活性化のために島原鉄道カフェトレイン(観光列車)に島原ならではメニューを提供するなどの取り組みについて説明を行いました。
障がい者支援施設「若菜寮」にも見学いただき、重度高齢化に対応した様々な設備や利用者支援の話などを行いました。支援方針として明るく楽しく笑顔で利用者さんと接することや利用者支援の心構えなどについてお話しました。
LANYの竹内さんとCOO市川さんは今回、はるばる東京からお越しいただきました。プロボノ支援を行っている悠久会の事業所の雰囲気や利用者さんが生活したり働く姿、現場で働く職員さんの生の声を聞いてみたいとの要望で実現しました。竹内さんからは、「皆さんから福祉に対する熱い思いを聞くことができ、足を運んだからこそ見えてきた課題や魅力を感じました」と感想をいただきました。今回の訪問で悠久会に対する解像度が上がったことで、より緊密な意見交換が可能になることでしょう。
まとめ SDGs目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」~福祉とデジタルマーケティング~
都市部のデジタルマーケティング会社と地方の社会福祉法人。普通に活動していれば、なかなか接点を持たないと思います。
しかし、ミーティングもオンラインで対応可能になったりと、デジタル技術の進化により気軽に交流を持てるようになったとも言えます。
現代は、VUCAの時代(Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性))とも言われ、過去よりも複雑性を増した社会課題や福祉課題が山積しています。このような複雑化した課題を解決するには単一の視点だけではなく、視野の違い、専門性の違い、リソースの違いを活かす必要性があります。パートナーシップを組み対話と協働を行うことで、単独では成しえなかった課題の解決につながることもあると思います。
福祉がデジタルマーケティングを活用することによるメリットは前述してきたとおりですが、デジタル分野が福祉分野と関わることで得られるメリットもあるかと思います。
Googleでは、インクルーシブなプロダクトデザイン「プロダクトインクルージョン」を掲げており、マイノリティや障がいを持つ人達が使いやすいUX(ユーザーエクスペリエンス)やUI(ユーザーインターフェース)を考慮することで、ユーザーの範囲が拡大しビジネスチャンスにつながることも想定しています。
①7億人:これから2~3年でインターネットユーザーとなる数 ②1兆ドル:障がいをもつ消費者の世界市場(2017年) ③10億人:世界の障がいをもつ人の数
『Google流 ダイバーシティ&インクルージョン~インクルーシブな製品開発のための方法と実践』より(2021年9月出版)
WHOによると”重大な障がいを経験している人は13億人と推定(世界人口の16%、6人に1人)”(WHO:2023年7月)
上記から示されるように、デジタル技術が進歩することで多くの人々が恩恵を受けられる一方、デジタルツールの利用には高度なデジタルリテラシーが必要な場合もあり、テクノロジーによる分断が生じ、格差や不平等の拡大にもつながる恐れがあります。
確かに我々の生活もスマートフォンによって大変便利になりましたが、スマートフォンを使えない人(持てない人)はその便利さの恩恵を得ることができません。障がいを持った人達でも使いやすいデジタルツールや社会のあり方について、我々、福祉業界の者がデジタル分野の方達と協働し、インクルーシブなプロダクトデザインを実現することで、デジタル分野においても「誰一人取り残さない社会」に近づけることができるでしょう。
「すべての人達のために、すべての人でつくる」この考えは、デジタルツールのプロダクトデザインのみならず、ソーシャルグッドな社会をデザインする場合にも必要な考え方でしょう。
私たちは、「福祉×デジタルマーケティング」のパートナーシップを通じて「強く優しい社会」並びに「あらゆる立場のすべての人々の心通い合う社会」を目指してまいります。新たな福祉の可能性に興味のある方、福祉業界に興味のある方はぜひお力をお貸しください。
(※今回の事例を含む社会福祉法人悠久会のパートナーシップ事例を知りたい方は下記の記事をご覧ください。)