精神障害は誰でもなる可能性がある
だからこそ、支援の際にはその人のライフストーリーを大切にしています。
自分自身もそうですが、自分の身近にいる家族や友人も例外ではありません。だからこそ、支援の際にはその人のそれまでのライフストーリーを大切にする事を私たちは心掛けています。これからの希望や目標を見つけていただき、人生の再出発をサポートしているのだという意識を持つことが必要だと感じています。
様々な障害についてご紹介するコーナーです。
支援を必要とする人に適切な配慮が行えるよう理解を深めていきましょう。
どんな障害特性がありますか?
精神障害には様々な病名があり、他の障害と重複している場合もあります。また、広い定義が存在しているのも特徴です。
ただし、精神障害には遺伝子や親の育て方には原因はなく、その人の性格そのものにも原因がない事がわかっています。
その人が持っている特徴(ストレスに対する脆さ、神経の過敏さなど)と、社会的要因(日常的なストレス、生活環境)の相互作用で、脳内の神経伝達物質のバランスが崩れ、精神疾患を引き起こされると考えられます。
その症状として、幻聴(そこにいない人の声が聞こえる)、妄想(誰かに見られている感じがする)、感情の平板化(楽しいと感じられない)などが現れ、人付き合いが嫌で引きこもり生活となる、学校や仕事に通えなくなる、自分や他人を傷つけてしまうといった行動へと繋がっていきます。
症状について一部ご紹介
統合失調症
発症の原因は詳しくはわかっていませんが、100人に1人弱がかかるとされています。
「幻覚」「妄想」が特徴的な症状ですが、その他にも、例えば「以前から楽しみにしていた事に興味を示さなくなる。」「相手の話の内容がつかめず、周囲にうまく合わせられない。」「疲れやすく、人付き合いを避けて引きこもりがちになる。」といった症状が現れ、周囲からは「怠けている」と見られる事があります。
新薬の開発は進んでいますが、完治させる薬はまだありません。そのため、本人が病気と付き合いながら、社会との接点を保っていけるよう見守る事となります。
気分障害
うつ状態のみの時にはうつ病と呼び、うつ状態と躁状態を繰り返す場合には双極性障害と呼びます。日本でも時代とともに増加傾向にあり、その症状は人によって様々です。
「考え過ぎているだけ」「悩んでいて眠れないだけ」と思いがちで、自覚症状のサインを見逃してしまう事も少なくありません。
うつ状態の時は無理をせず、しっかりと休養をとれるよう配慮が求められます。
躁状態の時は安全管理や金銭管理に気を付けていく事が必要です。また、自分を傷つける行為が現れた時には、本人やご家族は速やかに専門家に相談するように促します。
依存症
「特定の何かに心を奪われ、やめたくてもやめられない」状態です。代表例としてはアルコール、薬物、ギャンブル等があげられます。
適度な依存を逸脱し、その行為を繰り返さないと満足できず、自らの力ではやめる事ができなくなった結果、「睡眠や食事のバランスが崩れ健康状態が悪化してしまう」「学校や仕事が休みがちになる」「隠れて借金をし、お金の工面に手段を選ばなくなる」「家族に嘘をつき、家族との関係が悪化する」といった悪影響が及んでしまう状態を言います。
社会生活を送っていく上で、本来であれば優先しなければならない活動を選択できなくなる事が特徴です。
まずは本人や家族はその症状が依存症であるという病識と、依存症は治療を必要とする病気であるとの理解が必要になります。依存症の特徴としては、一度、回復したように見えても、再度、依存してしまう事があるので、本人にもその支援者にも根気強さが求められてきます。
厚生労働省「障害者差別解消法福祉事業者向けガイドライン」参照
Staff interview
精神障害者の方に対しての「福祉」の役割について
精神障害者の方が地域での生活を送っていくためには、医療と福祉が連携を行い、それぞれの役割を果たしていく事が重要です。
特に、自分や他者を傷つけ、危険性の高い緊急的な状況においては、医療機関の介入が必要不可欠となります。また、医療機関は薬物療法や心理社会的療法を通して、継続的にその方の社会生活のサポートを行っていく事となります。
その一方で、福祉側の役割は、その方の就労支援や生活環境の支援、その他、将来への不安の緩和など、「体の外側にある障害」を乗り越えるためのサポートを行っていきます。
新たな人生への希望。再出発を支えていく事こそが福祉側の役割
例えば、アルコール依存症の方を支援していく場合、依存症の治療や内科的な治療については医療機関が担っていく事となります。
比較的、症状が安定傾向にあり、長期的な視点で支援を行える状態となってからは、福祉側が行う支援に大きな意味をもちます。
体調が安定すると、地域での生活を再開する事となりますが、その方が失業し、家族を失っているという状況かもしれません。元々、家事の経験がなく、一人暮らしに強い不安を感じるかもしれません。
その方が治療を継続しながら、安定した生活を送っていくためには、まず、就労支援や生活面の課題を解決していく事が必要です。また、お互いを励まし合い、孤独感を緩和できるような存在が必要となるかもしれません。
既存の社会資源や福祉サービスを有効的に活用していく事となりますが、適した社会資源が不足しているのであれば、行政への働きかけを行い、地域を変えていく事も手段の1つとなります。
本人に病識がある場合と、そうでない場合
病識がある場合には、本人も治療を継続していく事の必要性を理解しており、福祉サービスの利用にも繋がりやすい傾向にあります。そのため、医療と福祉の連携がとりやすく、周囲の環境が整いやすくもなります。
また、本人自身が治療方針や支援の方針の選択に関わる機会ができるため、自分が一歩ずつ前進しているのだという意識にも繋がるのではないかと思います。
支援者が最も大切にするべきこと
ここまで「精神障害」について触れてきましたが、最も大切な事は支援者が「障害を持っている人の支援」をしているのではなく、「その人の希望を実現していくための支援」をしているといった視点を持つ事だと思います。
利用者さんと関わっていくためには、障害の特性を理解しておく事は大切ですが、それだけでは良好な関係を築く事は難しいと感じています。
普段の業務の中で、色々な人との関りを持っていると、人間は自分の目標や希望の話しをする時には、活き活きとした表情になるのだと感じています。それは障害を持たれた方に限った話ではなく、大人であっても、子どもであっても、高齢者であっても、共通している事ではないかと思っています
「共生社会の実現」のために、障害について正しく理解しよう。
人それぞれに合わせた本当に必要な支援を。